果たせなかった義父の『家に帰りたい』の夢④
番号 12
本人の“理想”と受け入れざる“現実”
数々の『在宅案』を却下され、不本意ながらも老健の入所を迎えた義父。
転院先の介護タクシーで到着すると歩行器を使いながらも颯爽と降り、出迎えた私達をひと睨みしながら入所手続きを受ける義父。
代わる代わる職員の方がご挨拶を頂く中、どもりながらも大きな声で返事をする義父。
入所者の中でもダントツにコンディションが良さそうな状況をアピールする姿は、自宅に帰る夢を阻止した我々を後悔させるには十分な立ち居振る舞いでした。
長時間の手続きが終わり、いよいよ部屋に入る間際、さすがにかなり疲れた様子で車いすに乗せられながら、今まで生返事ばかり繰り返してきた私達に、
「また会いにきてくれよな」
とぽつりと言い残し、寂しそうにエレベーターに乗っていく姿に罪悪感しか生まれませんでした。
求めた“居場所”
入所した老健に売店などもなかった為、全ての日用品は家族側で買いそろえ届けなくてはいけません。
義父は日常生活でもこだわりの強い方でしたので、洋服も複数枚、場面に合わせて準備したり、シェーバーや普段使いのものは自分の手慣れたものをリクエストされ、ほぼ毎週、多ければ2~3回届けに行くような状況でした。
電話に出られない時は職員さん経由で連絡をもらい催促されるような場面もありました。
娘である妻が小さい頃から母親に代わって家事を行ってきたこともあり一番頼みやすいようで、仕事中でも休日で昼夜関係なく電話をしては様々な物品をリクエストしていました。
妻も一緒に住めなかった負い目もあるせいか、数々の要望を最大限揃えては持参し、老健ライフを充実できるようサポートをしました。
今、思えば施設に馴染めない中、少しでも快適に過ごせるよう自分のテリトリーを必死に作っていたのかもしれません。
➤次回『果たせなかった義父の『家に帰りたい』の夢⑤』:https://oyakaigo.jp/article/show/257
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