「えっ、そうだったの?」 親介護で家族が勘違いしやすい5つのこと

番号 134

# 介護録

# 大切な家族へ

介護が始まると、突然やってくるのは介護だけではありません。

そんな時、多くの人が口にするのが、

「ずっとそうだと思っていました。」

実は、その思い込みが家族を困らせることがあります。

今回は、介護相談の現場で本当によくある5つの勘違いをご紹介します。

「固定資産税を払い続ければ、この家は自分のものになる」って本当?

父が施設へ入ってから17年。

実家は空き家になりました。

近くに住む次男は、月に何度も実家へ通います。

庭の草刈り。

壊れた雨どいの修理。

台風が来れば様子を見に行き、毎年届く固定資産税も自分の口座から払い続けてきました。

父が亡くなり、兄弟で司法書士の事務所を訪れます。

次男は少し安心した表情で言いました。

「固定資産税は17年間、私が払ってきました。この家は私が引き継ぐことになりますよね。」

司法書士は登記簿を閉じ、静かに答えました。

「固定資産税を支払っていても、それだけで所有権が移ることはありません。」

「え……?」

思わず言葉を失う次男。

司法書士は続けます。

「税金を払うことと、不動産の所有者であることは別なんです。」

17年間守ってきた実家。

でも、その努力と所有権は別の話でした。

「遺言書は直筆なら有効」って本当?

父が亡くなった数日後。

机の引き出しから一通の封筒が見つかりました。

表には大きく「遺言」と書かれています。

家族はほっとしました。

「お父さん、ちゃんと準備してくれてたんだ。」

便箋には父の字で、

「家は長男へ。」

「預金は兄妹で仲良く分けること。」

そう書かれていました。

念のため司法書士へ確認すると、表情が少し曇ります。

「このままでは法的な効力が認められない可能性があります。」

「え?父が自分で書いたんですよ。」

司法書士は説明しました。

「自筆であっても、日付や書き方など法律で決められた要件があります。」

家族は初めて知りました。

直筆だから安心ではなく、法律どおりに作成されて初めて有効になることを。

「介護をたくさんした人ほど相続は多くなる」って本当?

長女は母を10年間介護しました。

仕事帰りに実家へ寄り、食事を作り、病院へ付き添う。

夜中に転倒の連絡があれば、すぐ車を走らせました。

一方、弟は県外に住み、年に数回しか帰省できません。

母が亡くなり、相続の話になった日。

長女は弁護士へ相談しました。

「10年間介護してきました。相続は少し多くなりますよね?」

弁護士は静かに答えました。

「介護した年数だけで、自動的に相続割合が増える制度ではありません。」

長女は驚きました。

「私の10年は何だったんですか……。」

弁護士は続けます。

「一定の条件では寄与分などが認められる場合もあります。でも、介護した人が必ず多く相続できるわけではありません。」

介護と相続。

似ているようで、まったく別のルールで動いていました。

「長男じゃないと介護の手続きはできない」って本当?

母が脳梗塞で倒れました。

病院からは、

「早めに介護保険を申請してください。」

と言われます。

長男は県外。

仕事の都合ですぐには帰れません。

実家の近くに住む次男は、市役所へ向かいました。

しかし受付で立ち止まります。

「私は次男なんですが……長男じゃなくても申請できますか?」

地域包括支援センターの職員は笑顔で答えました。

「もちろんできます。長男か次男かは関係ありません。」

介護保険の申請。

ケアマネジャーとの相談。

施設探し。

多くの手続きは、家族であれば進められます。

「長男が来るまで待とう。」

その思い込みが、介護を遅らせてしまうこともあるのです。

「要介護度が高ければ施設へ優先的に入れる」って本当?

母は要介護4と認定されました。

家族は少し安心しました。

「これなら施設へ入れるね。」

そう思い、施設へ相談へ行きます。

相談員は資料を見ながら申し訳なさそうに話しました。

「現在は満床です。待機されている方も多くいらっしゃいます。」

「要介護4でもですか?」

家族は驚きます。

相談員はうなずきました。

「介護度は判断材料の一つですが、それだけで優先順位が決まるわけではありません。施設ごとに基準も違います。」

家族は初めて現実を知りました。

介護度が高いことと、すぐ入所できることは同じではなかったのです。

「知っているつもり」が、一番怖い。

固定資産税を払い続ければ家は自分のものになる。

直筆の遺言なら有効。

介護した人ほど多く相続できる。

長男しか介護の手続きはできない。

介護度が高ければ施設へ優先的に入れる。

今回ご紹介した5つは、どれも実際の相談現場で専門家がよく耳にする思い込みです。

そして、その多くは専門家に相談したとき、初めて「違ったんだ」と気付くケースばかりです。

介護は、誰にでも突然始まります。

だからこそ、「たぶん大丈夫」「みんながそう言っていた」ではなく、一度専門家に確認することが、家族の後悔を防ぐ第一歩になります。

親を守るために。

そして、家族が笑顔で介護を続けるために。

思い込みよりも、正しい情報を味方につけてください。

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