薬だけでは支えきれない時代へ―名立たる製薬会社が介護機器開発を競い始めた理由
番号 109
製薬会社が介護機器へ広がる背景
先日、開催されていたCare Show Japanという展示会に行ってきました。
医療・介護・ヘルスケア分野の企業が集まる展示会ですが、会場を回っていて特に印象的だったのが、製薬企業がデジタル機器・介護機器への取組が圧倒的に進化していることでした。
これまで製薬会社といえば薬の研究開発というイメージが強かったのですが、最近は見守りセンサー、服薬支援機器、健康管理アプリなど、生活を支える技術の展示が目立っているそうです。
担当者の説明でも、「薬の効果を維持するには生活支援が重要」といった話が多く聞かれました。
背景には、日本の高齢化があります。厚生労働省の推計では、2025年には75歳以上人口が急増し、医療と介護を同時に必要とする人が大幅に増えると言われています。展示会でも「医療と介護の境界がなくなってきている」という言葉が印象に残りました。
また、会場では服薬管理のデジタル化や、生活データを活用した健康管理の事例が多く紹介されていました。例えば、服薬状況を自動記録する機器や、活動量から体調変化を予測するシステムなど、薬だけでは補えない生活領域をカバーする技術が増えているそうです。
さらに、製薬会社単独ではなく、家電メーカーやIT企業との連携が目立っていたのも特徴でした。異業種が組み合わさることで、これまでにない介護支援が生まれていると言われています。
親の体調が少し気になり始める中高年世代にとっても、こうした変化は現実的なテーマになりつつあります。展示会を見ていて感じたのは、これからの医療は「薬+生活支援」が当たり前になるという流れでした。

薬だけじゃ守れない?介護リスクが“生活”に潜んでいる理由
高齢化が進むにつれて、医療の役割が変わってきていると言われています。以前は病気を治すことが中心でしたが、現在は「生活を維持すること」が重要になってきたそうです。展示会でも、治療後の生活を支える技術が多く紹介されていました。
特に目立っていたのが認知症関連の支援機器です。認知症では薬の研究が進んでいる一方で、実際の介護現場では服薬忘れ・徘徊・転倒といった生活課題が大きいと言われています。エーザイのように認知症研究を進めてきた企業でも、近年は生活支援領域への関心が高まっているそうです。
認知症患者の約4割に服薬管理の課題があるという調査もあると言われています。薬があっても飲み忘れがあれば効果が安定しないため、服薬支援機器の需要が高まっているそうです。展示会でも、時間になると音や光で知らせる機器や、服薬状況を家族に通知する仕組みが紹介されていました。
また、転倒対策も重要なテーマでした。国立長寿医療研究センターの研究では、高齢者の約20%が年間1回以上転倒すると言われています。転倒は骨折につながり、そのまま要介護状態になるケースも多いそうです。つまり、病気を治しても生活が安全でなければ健康は維持できないということになります。
さらに近年注目されているのがフレイルです。筋力低下や活動量低下が進むと要介護に近づくと言われていますが、この段階で対策すれば回復する可能性があるそうです。展示会でも、歩行データや活動量を測定する機器が多数紹介されていました。
慢性疾患も生活との関係が強いと言われています。糖尿病や心不全では、食事や運動の影響が大きく、日常管理が重要だそうです。例えば心不全では、体重増加が悪化のサインになると言われており、日常的な測定が推奨されています。
こうした背景から、製薬会社は薬だけでなく生活支援機器にも注目しているそうです。薬の効果を最大化するために生活を管理するという考え方です。
また、親と離れて暮らす家庭では異変に気づきにくいという課題もあり、遠隔見守り機器の関心が高まっていると言われています。つまり現在は、治療と生活が一体化する時代へ変わりつつあるようです。

データが薬を変える?製薬会社がテック化している理由
展示会で多く聞かれたキーワードが「データ活用」でした。製薬会社は長年の研究で医療データを蓄積しており、それが介護機器開発に活かされていると言われています。
武田薬品工業でも、デジタル技術を活用した患者支援の研究が進められているそうです。服薬データや生活データを組み合わせることで、体調変化を早期に把握する取り組みが行われていると言われています。
また、OECDの報告では、日本の高齢者の約7割が複数の薬を服用しているそうです。複数の薬を服用すると、飲み忘れや重複服薬のリスクが高まると言われています。
展示会でも、服薬のタイミングを自動記録する機器や、飲み忘れを通知する仕組みが多く紹介されていました。こうした機器は、薬の効果を安定させるための重要な技術だと言われています。
さらに、ウェアラブル機器の進化も大きなポイントです。歩数、心拍数、睡眠などのデータを日常的に取得できるようになり、医療との連携が進んでいるそうです。活動量の変化から体調悪化を予測する研究も進んでいると言われています。
ここで注目されているのが生活データです。治験では分からない日常の変化を把握できるため、新しい医療につながる可能性があるそうです。つまり、生活データが医療の一部になり始めているということです。
製薬会社の強みは、単に機器を作ることではなく、医療データを活かして意味のある機器を設計できる点にあると言われています。

家族を救う介護テック競争―異業種連携が一気に加速
展示会でもっとも印象的だったのが、異業種連携の広がりでした。製薬会社だけでなく、家電メーカーやIT企業が共同で開発している事例が多く紹介されていました。
パナソニックでは、見守りセンサーや転倒検知機器の開発が進められていると言われています。離れて暮らす家族がスマートフォンで状況を確認できる仕組みは、共働き世帯の増加により需要が高まっているそうです。
また、大塚ホールディングスでは、栄養と医療を組み合わせた取り組みが進んでいると言われています。高齢者では低栄養が健康悪化の原因になるケースが多いそうです。
さらに、富士経済の調査では、介護テクノロジー市場は2030年までに約1.5倍に拡大すると予測されています。背景には介護人材不足があります。
また、総務省の調査では、介護を行う人の約6割が仕事をしながら介護をしているそうです。いわゆるビジネスケアラーの増加です。このため、遠隔見守りの需要が急増していると言われています。
最近はAIを活用した見守りも増えており、生活リズムの変化から異常を検知する研究も進んでいるそうです。こうした技術は、家族の心理的負担を軽減する効果も期待されていると言われています。
つまり介護機器は、高齢者だけでなく家族の生活を守るインフラになりつつあります。
製薬会社が介護機器を競い合う背景には、新しい市場というだけでなく、医療の役割そのものが変わってきたことがあります。治療から生活支援へという流れが加速しているようです。
親介護は突然始まると言われています。しかし、早めに情報を知っておくことで準備の選択肢は大きく変わるそうです。
展示会や介護機器の情報を一度チェックし、親の生活環境や服薬状況を確認してみてはいかがでしょうか?
