「名前が出てこない…」だけではありません―エビデンスが示す中高年の早期認知機能低下

番号 98

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忙しすぎるがゆえに見過ごされがちな“脳の変化”

先日、ニュース番組で「40代後半から50代にかけて増えている“脳の不調”」をテーマにした特集が放送されていました。

番組では、仕事上の小さな判断ミスや、以前なら問題なくこなせていた業務に時間がかかるようになったことをきっかけに、医療機関を受診した中高年の事例が紹介されていました。

検査の結果、明確な認知症ではないものの、注意力や情報処理速度の低下が確認されたということです。

専門医は、「この年代では、本人が不調と強く自覚する前に、脳機能の変化が始まっている場合が多い」と説明していました。
物忘れや集中力低下は、疲労や忙しさのせいにされやすく、受診や対策が後回しになりやすいと言われています。

番組では、「名前が出てこない」「言葉に詰まる」といった現象が、中高年期の認知機能変化を示す初期サインとして研究でも報告されている点にも触れていました。
こうした変化は、生活や仕事の質に少しずつ影響を及ぼす可能性があるとされています。

このニュースが伝えていたのは、特別な人の話ではなく、多くの中高年が向き合う可能性のある現実だということです。その最も身近な入り口が、「名前が出てこない」という感覚なのだと示されていました。

研究は複数の初期サインを示している

加齢に伴う認知機能低下については、国内外で多くの研究が積み重ねられています。その中で、「人の名前が思い出せない」「言葉がすっと出てこない」といった現象は、中高年が最初に自覚しやすい変化だと言われています。ただし専門家の間では、「それは氷山の一角にすぎない」という見方が一般的だということです。

神経心理学の分野では、認知機能は一枚岩ではなく、複数の能力の集合体だと説明されています。記憶力、注意力、処理速度、実行機能などがそれぞれ連動して働いており、どれか一つが低下すると、日常生活のさまざまな場面に影響が出ると言われています。

エビデンスをもとにすると、早期に見られやすい変化として、少なくとも次の三つが指摘されています。

一つ目は、「段取りや計画が立てにくくなる」変化です。複数の研究で、40代後半から前頭葉機能、特に実行機能が緩やかに低下し始める傾向が確認されているということです。その結果、優先順位付けがうまくいかなくなったり、予定外の出来事に対応しにくくなったりすると言われています。

具体的には、「やるべきことは分かっているのに着手できない」「予定を詰め込みすぎて破綻する」「作業の順番を間違える」といった形で現れることが多いと報告されています。これらは意欲の問題ではなく、脳の制御機能の変化として説明されています。

二つ目は、「会話や説明の理解が追いつかなくなる」現象です。注意機能やワーキングメモリに関する研究では、中高年になると、一度に処理できる情報量が減少する傾向があると言われています。そのため、複数人での会話や情報量の多い説明を受ける場面で、話の流れを把握しづらくなるケースが報告されています。

この変化は本人よりも周囲が先に気づくことが多く、「話がかみ合わない」「説明を何度も求める」といった形で表面化することがあるということです。ただし本人は「聞いていなかったわけではない」と感じており、違和感のギャップが生じやすいとされています。

三つ目は、「慣れている作業でも時間がかかるようになる」点です。処理速度の低下は、加齢に伴う代表的な認知機能変化の一つとして知られています。特に、少しでも新しい要素が含まれる作業では、理解や判断に時間を要する傾向が強まると言われています。

研究報告では、「以前は無意識にできていた作業で立ち止まる時間が増える」「同じ資料を何度も読み返す」といった行動が、中高年期の初期変化として観察されているということです。これも記憶障害というより、情報処理全体のスピード低下として説明されています。

これら三つの変化に共通しているのは、日常生活が破綻するほどではないため、本人が深刻に受け止めにくい点だと言われています。しかし研究者は、「この段階で気づけるかどうかが、その後の経過を左右する」と指摘しているということです。

なぜ中高年で表面化するのか

研究者の間では、「中高年期は脳の予備力が低下し始める時期」と説明されています。若い頃は多少の無理がきいていた作業量も、同じやり方では処理しきれなくなるということです。

睡眠不足や運動不足が認知機能に影響を与えることは、多数の疫学研究で示されています。特に慢性的な睡眠不足は、注意力や記憶の定着に悪影響を及ぼすと言われています。また、デジタル機器による頻繁な注意の切り替えは、ワーキングメモリを消耗させやすいという報告もあります。

ある調査では、「仕事が終わった後、一日の内容を思い出せない」と感じる中高年ほど、注意機能のスコアが低い傾向が見られたということです。これらは怠慢ではなく、脳の処理能力の問題として説明されています。

早く気づいた人ほど回復しやすい

中高年の認知機能低下について、近年注目されているのが「可逆性」です。複数の研究で、生活習慣を改善したグループでは、注意力や記憶力が改善する傾向が確認されたと報告されています。

具体的には、十分な睡眠、定期的な有酸素運動、そして一度に一つの作業に集中する習慣が効果的だと言われています。また、定期的に自分の状態をチェックすることで、早期対応につながるとも指摘されています。

実際に、「生活リズムを整えたところ、集中力が戻った」「意識的に休憩を取るようにしたらミスが減った」といった事例が報告されているということです。脳は年齢に関係なく、環境次第で機能を保ちやすい臓器だと説明されています。

「名前が出てこない」「段取りが悪くなった」「会話が追いにくい」。これらは多くの研究で、中高年期に現れやすい変化として報告されています。単なる気のせいと片付けず、一度立ち止まって自分の生活や脳の状態を見直してみてはいかがでしょうか?

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