親介護を一人にしない社会へ 認知症サポーターという身近な支え
番号 96
「助かった」その一言が示す、地域で支える親介護の現実
先日、認知症の高齢者が外出先で道に迷ったものの、地域の連携によって無事に家族のもとへ戻ることができた、というニュースが報じられていました。
自治体と商店街が協力して認知症サポーター養成講座を継続的に実施してきた地域での出来事です。
最初に気づいたのは、通り沿いの店舗スタッフでした。
「何か様子が違う」と感じ、声をかけ、休める場所へ案内する。
その後、近隣店舗や警察、家族へと情報がつながり、大きな混乱や事故につながることなく解決しました。
家族が迎えに来たとき、何度も口にしたのは
「本当に助かりました」
という言葉だったそうです。
親介護、とくに認知症が関わると、
「もし迷子になったら」
「周囲に迷惑をかけたら」
と、不安が先に立ちがちです。
しかしこのニュースが示しているのは、
認知症を理解している人が地域にいるだけで、結果は大きく変わる
という事実です。
その中心にあるのが、認知症サポーターという存在です。

「何かをしてあげる人」ではなく「理解している人」
認知症サポーターとは、
厚生労働省が推進する「認知症サポーター養成講座」を受講し、認知症について正しく理解し、できる範囲で見守りや声かけを行う人のことです。
重要なのは、
特別な介護技術や専門資格を持つ人ではない
という点です。
認知症サポーターは、
・医療や介護の専門職
・自治体職員
・企業の従業員
・学生
・地域の住民
など、ごく普通の立場の人たちです。
彼らが共通して持っているのは、
「認知症の人の行動には理由がある」
「責めたり急かしたりしない」
「困っていそうなら声をかける」
という基本的な理解です。
つまり認知症サポーターとは、介護を代わりに行う人ではなく、
親介護をしている家族を孤立させないための“土台”となる存在だと言えます。
現在、認知症サポーターは全国で約1,400万人以上。
日本では、10人に1人が「認知症について基礎的な理解を持つ人」になっています。
これは、親介護を支える環境がすでに社会の中に広がり始めていることを意味しています。

「外に出るのが怖くなくなった」家族が感じた変化
70代の母親を介護するAさんは、
認知症の症状が出始めてから外出に強い不安を感じていました。
買い物中に手順がわからなくなる。
同じ質問を何度もしてしまう。
そのたびに周囲の空気が変わり、「家にいた方が安全なのでは」と考えるようになったといいます。
転機は、近所のスーパーが
全従業員向けに認知症サポーター養成講座を実施していると知ったことでした。
実際にレジで母親が戸惑った際も、店員は急かすことなく、落ち着いた声で対応しました。
Aさんはこう話します。
「母が“迷惑な人”ではなく、“理解される一人の人”として扱われたと感じました」
また、別の自治体では、認知症サポーターが地域に増えたことで
・早期の声かけ
・行方不明時の情報共有の迅速化
・家族からの相談件数の増加
といった前向きな変化が報告されています。
これらの成功事例に共通しているのは、高度な専門性ではなく、認知症を知っている人が一定数いることです。

「家族だけで頑張らない」でいい 〜認知症サポーターとともに生きるという選択〜
認知症の親介護は、短期的な問題ではありません。
だからこそ、「家族がすべてを背負う」という考え方は、長く続けるほど苦しくなってしまいます。
認知症サポーターが身近にいることで、家族には次のような変化が生まれます。
・外出や社会参加を過度に制限しなくて済む
・「迷惑をかけている」という罪悪感が軽くなる
・困ったときに気づいてくれる人がいるという安心感
・親介護を孤独な役割だと感じにくくなる
さらに、家族自身が認知症サポーター養成講座を受講することで、認知症を正しく説明できるようになり、周囲との関係がスムーズになったという声も多くあります。
認知症サポーターは、劇的に何かを解決してくれる存在ではありません。
けれど、1,400万人以上の「理解している人」がいる社会は、親介護の不安を確実に和らげています。
まずは、お住まいの地域にどんな認知症サポーターの取り組みがあるのかを調べてみてはいかがでしょうか?
