離れている今が、いちばん話せている ―アバター介護士が示すリモート親介護の可能性と限界―

番号 90

# 便利グッズ

# 介護録

# 介護の準備

アバター介護士の登場が変えた親介護の前提

先日、ニュースで「アバター介護士」が高齢者施設や在宅支援の現場で活用され始めているという話題を目にしました。

アバター介護士とは、遠隔地にいる人がアバターを通じて高齢者と会話したり、声かけや見守りを行ったりする仕組みです。

画面越しではなく、親しみやすいキャラクターを介してやり取りすることで、高齢者が自然に会話に応じやすくなると報道されていました。

このニュースで印象的だったのは、「直接そばにいなくても、関係性は十分に築ける」という点です。

これまで親介護は、「近くに住んでいる人が担うもの」「頻繁に会える人の方が有利」という前提で語られてきました。
しかしアバター介護士の事例は、その常識を静かに覆していました。

親介護において本当に重要なのは、物理的な距離よりも「どう関わるか」です。

定期的に声をかけ、変化に気づき、必要なときに人やサービスにつなぐ。
その役割は、必ずしも同じ場所にいなくても果たせます。

むしろ、距離があるからこそ、意識的にコミュニケーションを取るようになり、関係が改善するケースも少なくありません。

さらに注目すべきは、こうしたリモート親介護が比較的リーズナブルに実現している点です。
高額な設備投資をしなくても、月数千円から1万円程度の負担で、親の安心と家族のつながりを保っている事例が増えています。

一方で、アバター介護士を含むどんなリモート技術にも限界はあります。

今回は、リモート親介護によってコミュニケーションが良くなった事例、無理なく続けられたコスト感、そして必ず訪れる限界点について、実際の介護家族の声を交えながら考えていきます。

「一緒に住んでいた頃より、今の方がよく話す」家族が増えた理由

東京都在住の40代女性Aさんは、地方で一人暮らしをする母親の親介護をリモートで行っています。

週に2回、短時間のビデオ通話を行い、必要に応じて見守りサービスも併用しています。Aさんは「同居していた頃より、今の方がちゃんと話しています」と言います。

同じ空間にいると、会話はどうしても生活の一部に埋もれてしまいます。しかし離れている今は、「話すこと」そのものが目的になります。

母親も、「顔を見て話す時間が楽しみ」と感じているそうです。

50代男性Bさんも同様です。
父親とは以前、介護の話になると衝突しがちでしたが、リモート親介護を始めてからは、短くても定期的な会話が習慣になり、感情的な対立が減りました。

親介護が「特別な話題」ではなく、日常の延長になったことが大きな変化でした。

リモート親介護では、コミュニケーションが「ついで」ではなく「意識的な行為」になります。その結果、量だけでなく質も向上していくのです。

お金をかけなかったから、家族関係が壊れなかった親介護

リモート親介護がうまくいった家族の多くは、費用面で無理をしていません。

Aさんのケースでは、
・見守り関連サービス 月3,000円
・通信費増加分 月2,000円
合計で月5,000円前後でした。

この程度の負担であれば、「お金の話ばかりしなくて済む」と言います。

親介護の会話が費用や不満に偏らず、生活や体調、気持ちの話に自然と向かいました。

Bさんも月1万円以内で運用しています。「もし高額だったら、兄弟間で負担の話ばかりして、関係がギスギスしていたと思う」と振り返ります。

リモート親介護が比較的リーズナブルであることは、経済的なメリット以上に、家族間コミュニケーションを守る効果を持っていました。

「もう限界だ」と感じた瞬間が、次の親介護の始まりだった

どれほど会話が増え、関係が良好でも、リモート親介護には限界点があります。

多くの家族が挙げるのは、
・夜間の転倒や徘徊が起きたとき
・排泄や服薬管理が難しくなったとき
・体調不良や不安を本人が隠すようになったとき

この段階では、「見えているのに助けられない」状態が生まれます。

神奈川県在住の50代男性Cさんは、父親の救急搬送をきっかけにリモート親介護を終えました。
「通知は来る。でも、その場にいない。その現実が限界でした」と語ります。

重要なのは、この限界を失敗と捉えないことです。リモート親介護は、

・親の自立を支える
・家族のコミュニケーションを整える
・次の選択肢を冷静に考える時間を作る

という役割を果たします。限界点は、その役割を終えた合図に過ぎません。

親介護は、近くにいればうまくいくとは限りません。

むしろ、離れているからこそ会話が増え、リーズナブルだからこそ余裕が生まれ、限界が見えるからこそ次の準備ができます。

アバター介護士に象徴されるように、親介護の形は確実に変わりつつあります。

親介護が気になり始めた今だからこそ、「離れて支えることで関係が良くなる可能性」と、その終わり方まで含めて考えてみてはいかがでしょうか?

その他のコラム

もっと見る

TAGタグから探す

AI介護相談