一生後悔する“どこへ?”を防ぎたい──親介護と最新デジタル徘徊防止機器で守る高齢者の命
番号 84
「徘徊事故の現実」と「最新デジタル見守り」の両面を考える
先日、「認知症高齢者の行方不明者、2024年は1万8121人、うち491人が遺体で発見された」という報道を目にしました。
報道によると、遺体で見つかった方のうち約8割が、行方不明となった場所から5キロ圏内で発見されたといいます。
多くは河川・河川敷、用水路、山林など“捜索しづらい場所”で見つかっており、徘徊からの事故や遭難、転落、溺水などが疑われると報じられていました。
このニュースは、決して他人事ではありません。
身近な親や祖父母、高齢の家族が「ほんの少し家を出ただけ」で、その後戻らない――そんな悲しい事態が、現実に起きているのです。
特に「親介護」を担う立場の人にとっては、一瞬の気のゆるみが取り返しのつかない結果につながるかもしれないという強い警鐘です。
だからこそ、私たちは“ただ見守る”だけに留まらず、できる限りの予防策を講じる必要があります。
近年では、GPSや位置通知、専用デバイスなど“デジタル見守り”という新たな選択肢が広がっており、徘徊による行方不明や事故のリスクを大きく減らせる可能性があります。

徘徊と事故の現状:数字が語るリスク
近年、日本では認知症による行方不明者、そして徘徊による死亡事故が多く報告されています。
たとえば、2024年には1万8121人の認知症または認知症疑いのある人が行方不明と届出され、そのうち491人が遺体で発見されたというデータがあります。
さらに、2023年には1万9039人が行方不明となり、これも統計開始以来の最多。
うち502人が遺体で発見されており、最近10年で行方不明者数は約1.8倍に増加しています。
これらの数字は、「徘徊=ちょっとした外出や徘徊」がたちまち命にかかわる重大事故につながる可能性があることを示しています。
特に遺体で発見された場所を分析すると、多くが河川や用水路、山林など、捜索が困難な場所でした。
ある医療研究では、認知症の高齢者が徘徊して死亡したケースの多くが「徒歩で数百メートル〜数キロ移動した後」「転落」「溺水」「低体温症」などによるものであったと報告されています。
死亡場所は自宅から数百メートルの近距離も多く、「ほんの少し見守りを怠っただけ」が命取りになる例もあるという警告です。
こうした統計と事例を前に、「見守りだけ」「鍵をかけるだけ」では安心できない現状があります。
特に家族が目を離さざるを得ない時間帯、夜間、買い物や通院など「ちょっとした外出」が危険になり得る。
だからこそ、“事故を未然に防ぐ備え”が強く求められているのです。

注目の最新デジタル見守りツールとサービス
そんな現実を受けて、近年、多くの企業や団体が「徘徊・行方不明対策用のデジタル見守りツール・サービス」を提供するようになりました。
GPS端末、専用タグ、スマホ連携サービスなど形態はさまざまですが、共通するのは「リアルタイムで居場所を把握」「通知・警告」「外出・脱走の検知」という目的です。
以下は代表的なサービスの一例です。
■絆-GPS
腕や首につける端末で、外出やエリア外出を検知、リアルタイムで位置情報を家族が確認可能。SOSボタンや通話機能付きのモデルもあり、万が一のときの通報にも対応。
URL:https://www.kizuna-one.jp/gps/
■みまもりGPS
バッグ・ポーチ・専用端末を所持するだけで、スマホやPCから高齢者の移動履歴や現在地を確認できる“手軽な見守り”サービス。初めてGPS見守りを導入する家庭にも向いています。
URL:https://www.mimamori-gps.jp/senior.html
■iTSUMO GPS(いつもGPS)
徘徊感知機器や見守り端末と、中継・通報センターを組み合わせたサービス。専用機器の装着と24時間対応のバックアップで、徘徊・行方不明事故の早期発見を目指します。
URL:https://itsumono-gps.jp/
■セコム みまもりサービス
防犯サービスで有名ですが、高齢者見守り・安心通報サービスも提供。屋内・屋外の安全確保、緊急通報、駆けつけ対応などを含むトータルサポートが特徴です。
URL:https://www.secom.co.jp/mimamori/
こうしたサービスの特徴は、単なる「位置を知る」以上に、「脱走・徘徊の予兆検知」「警告・通報」「家族や担当者への即時通知」などに対応している点です。
特に外出が多い高齢者、夜間の不安がある家庭、遠方に住む家族が介護をしている場合などでは、大きな安心につながります。
また、最近の研究では、ウェアラブルデバイスやIoT、AIを活用して「徘徊の兆候」を自動で検知するシステムの可能性も報告されています。
たとえば、歩行パターンや部屋の移動データから異常行動を認識する技術は、将来的に「本人の操作を必要としない見守り」の実現を目指しています。
つまり、技術の進歩により「事故が起きてから探す」のではなく、「事故が起きる前に防ぐ/気づく」ことが、親介護において現実的な選択肢になってきているのです。

親介護での活用、留意点、これからの見守り
では、これらのデジタル見守りツールを「親介護」の現場で活かすには、何に気をつけ、どう使えばよいのでしょうか。
まず大切なのは、本人の尊厳と安心感を守る配慮。高齢者にとって、GPS端末や見守りタグは「監視」や「制限」の象徴と感じられがちです。
だからこそ、なるべく「普段身につけて違和感の少ないもの」「日常の延長として自然に使えるもの」を選ぶことがポイントです。
たとえば、腕時計風、ブレスレット風、靴の中敷き型など、本人が抵抗感を抱きにくい形が望ましいでしょう。
次に、デバイスと暮らしの工夫を組み合わせること。GPSなどの見守りだけに頼るのではなく、夜間の施錠、出かける時間帯の見直し、ご近所との連携、見守りサービス・施設の利用など「人の目」「地域の力」「技術」の三本柱で備えることが大切です。
また、デジタル機器を導入したら、家族で使い方や目的を共有してください。
なぜ使うのか、どんなときに使うのか、本人にどう説明するか。事前の理解があることで、「見守り」への抵抗感はぐっと減ります。
最後に、将来の技術進化にも注目しましょう。
AIやIoTを用いた「自動異常検知システム」、ウェアラブルセンサー、スマートホームとの連携など、これからさらに「見守りが自然に」「介護が軽く」「事故リスクが低く」なる可能性があります。
今すぐ対応できるものから導入し、ゆくゆくは「次世代の見守り」の一歩を検討してみてはいかがでしょうか?
