大手だけじゃない!親介護を変えるベンチャー"かけつけサービス" 最前線
番号 83
AI × 駆けつけベンチャーが拓く親介護の次世代モデル
先日、NHKが「介護離職が家計を直撃、離れて暮らす親の突然のトラブルが背景に」というドキュメンタリーを放送していました。
番組では、都市部で働きながら遠方に住む高齢の親を支える“リモート介護家族”の声が取り上げられ、転倒・急病・生活トラブルなど、親が一人で生活するリスクの高さが浮き彫りになっていました。
特に、「夜中に転倒して誰もいない」「ガス漏れが起きたが、連絡がつかず駆けつけも困難」といった切実な事例が紹介されており、こうしたリスクに対して備えを持つことが生命線にもなり得ると強く感じさせられました。
番組ではまた、警備会社の駆けつけサービスや地域のボランティアとの連携など、現場で即時対応できる支援網を取り入れている家族が増えているという実践例も報じられていました。
これらは、ただ遠隔で見守るだけの「情報把握」にとどまらず、現地に“人”が行って確認・対応するという第二の層を持つことの重要性を実証しています。
リモート介護家族にとって、見守りのセンサーや監視カメラは心強いものですが、最終的な安心は「必要なときに駆けつけてくれる人」がいるかどうかにかかっています。
今回の報道が示すように、その駆けつけ体制を民間企業や地域と結びつけて設計する動きは、これからますます重要になるでしょう。
本コラムでは、リモートで親介護をしている家族向けに、かけつけサービスの意義、具体的な費用モデル、そして強固なネットワークを築くための実践的な方法について、理論とデータを交えて考えていきます。

確実に見に行ってもらえ、セキュリティも万全な‟他人”におまかせする
リモートで親介護をする家族が直面する最大の不安は、「異変が起きてもすぐに駆けつけられない」ことです。
見守りセンサーやアプリによって生活リズムや異常を把握できても、それだけでは不十分。
なぜなら、最終的な対処は“人による現地確認”が決定的だからです。
まず、緊急時対応の観点です。
例えば、転倒や急病時に本人が通報できなかったり、電話が繋がらなかったりする場合、見守りセンサーが異常を検知しても通報先が「家族」だけでは手が届かない可能性があります。
警備会社(ALSOK、セコムなど)が提供する“駆けつけサービス”は、通報を受けて現地に警備員(ガードマン)が急行し、安否確認や必要時の救急対応の橋渡しをしてくれます。
次に、離職抑制・精神的安定の観点です。
リモート介護家族が「重大なトラブルがあったらどうしよう」という不安を常に抱えていると、仕事や精神の負荷が増します。
データからも、ワーキングケアラー(働きながら介護をする人)の離職リスクや生産性低下は無視できない規模です。
こうしたリスクを、“駆けつけ体制”というセーフティネットで補うことは、家族にとっても企業にとっても意味があります。
さらに、かけつけネットワークの存在は、見守りだけでなく予防・管理の観点でも有効です。
ライフリズムセンサーや温湿度センサーとの併用により、「異常が長時間続く」「生活が偏っている」などの兆候を早期に感知し、定期訪問や安否確認を駆けつけ要員で行うことで、重大事故を未然に防ぐ可能性が高まります。
こうした層構造(見守り+駆けつけ+人的ネットワーク)は、単なる「見守り依存」ではなく、安全と安心を現実につなぐための実用的な設計です。

大手だけじゃない!親介護を変えるベンチャー駆けつけ最前線
リモート介護家族が実際に“かけつけネットワーク”を構築するには、まず以下のステップで取り組むことが賢明です。
(a)目的と優先度の明確化
最初に、「かけつけが必要な場面」を具体的に定義します。緊急(転倒・救急)だけでなく、日常の生活異常、鍵忘れ、軽微な家事サポートなども想定するかどうかを基準化します。
これによって、必要なサービス水準(24時間対応か、定期訪問も含むかなど)を決められます。
(b)リソース把握
次に、利用可能なサービスを洗い出します。主なリソースは:
・警備会社・セキュリティ事業者:ALSOK、セコムなどの見守り+駆けつけサービス
・地域ネットワーク:地域包括支援センター、民生委員、NPOやボランティア団体
・企業・福利厚生制度:勤務先でワーキングケアラー支援を受けられる可能性(例:NTTデータ ライフデザイン)
・ICTインフラ:見守りセンサー、スマホ見守りアプリ、通報端末
・人的ネットワーク:近隣の友人・知人、近所の住民、親戚など
(c)料金モデル・コスト目安の把握
実際にかけつけサービスを契約する際の金額目安も重要です。
昨今、大手の企業の他に続々とベンチャー企業も参入し、地域は限定的になっているもののレスポンスや機動性が良いサービスが当たり前になってきています。
以下に代表的なサービスとその費用構造を示します。
■株式会社 on call(ON CALL)
https://oncall-japan.com/
・サービス内容:在宅医療機関向け夜間・休日オンコール代行(往診代行)。
・医師 + 往診ディレクター(看護師や救急救命士)による2名体制で、在宅患者宅への駆けつけ診療を行います。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000099270.html?utm_source=chatgpt.com
・実績・強み:東京都・神奈川・埼玉など首都圏で展開。夜間・休日帯の医療体制が弱い地域に対して医療機関をバックアップ。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000099270.html?utm_source=chatgpt.com
・技術面:往診最適化アプリにより、受電から医師の駆けつけまでの所要時間を平均で 40% 短縮。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000099270.html?utm_source=chatgpt.com
・資金調達:プレシリーズAで 1.5億円 を調達。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000099270.html?utm_source=chatgpt.com
・サービス運用・コスト例:スポットプラン(往診体制確保のみ)で 月額10,000円の基本料金プランがある。
https://oncall-japan.com/service/?utm_source=chatgpt.com
→ リモート親介護家族への意義:親が在宅療養中で、医療的な緊急事態が起きたときに「駆けつけ診療」が可能な医療ネットワークを確保できる点で、非常に価値があります。特に、かかりつけ医が夜間対応できない場合の安心網として有効です。
■ドクターメイト株式会社(Doctor Mate)
URL: https://doctormate.co.jp/oncall
・サービス内容:「夜間オンコール代行™サービス」。特養や有料老人ホームなどの介護施設向けに、施設の看護師に代わって経験豊富な看護師が夜間オンコール対応を行う。
https://doctormate.co.jp/oncall?utm_source=chatgpt.com
特徴:全国対応。オンコールの電話相談だけでなく、必要に応じて実際に出動・支援が可能な体制。
https://doctormate.co.jp/oncall?utm_source=chatgpt.com
バックアップ体制:看護師対応 + 医師による常時バックアップ体制があり、緊急性のあるケースでも信頼できる。
https://doctormate.co.jp/oncall?utm_source=chatgpt.com
→ リモート親介護家族への意義:もし親が介護施設に入っていたり、将来的に施設利用を考えている場合、施設の夜間オンコールを代行するサービスを利用することで、施設運営側の負担を軽減しつつ、緊急時の対応品質を高められます。
家族としては、施設を信頼して選ぶ際の重要な評価ポイントになります。
■株式会社 CareMaker
URL: https://caremaker.jp/
・サービス内容:AIを活用して、訪問看護・介護のスケジュールを自動作成・最適化するクラウド/DXツール。
https://caremaker.jp/?utm_source=chatgpt.com
・特徴:訪問スタッフ(看護師・介護士)のルート効率、同行者調整、希望とNG日管理などを加味してスケジューリング。ミス予防用アラートも搭載。
https://caremaker.jp/?utm_source=chatgpt.com
・導入効果:訪問系サービス事業者にとって、スタッフの稼働率向上、無駄な空き時間の削減、業務効率化が可能になる。
https://caremaker.jp/?utm_source=chatgpt.com
→ リモート親介護家族への意義:CareMakerを導入している訪問看護・介護事業者が親の住む地域にあれば、訪問計画のスケジューリング効率が向上し、緊急訪問や定期訪問の応答性が高まる可能性があります。
これにより、駆けつけ体制を持つ訪問系事業者の「稼働力」が向上し、家族としても信頼できるサービス提供が期待できます。

ネットワーク設計にベンチャーを組み込む視点・リスク
ベンチャー企業をかけつけネットワークに取り込む際には、以下のポイントも考慮するとよいでしょう。
・信頼性と実績の確認:スタートアップには将来性がある反面、まだ実績が浅い場合があります。
on call のように資金調達実績や往診件数を公開している企業は安心材料になります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000099270.html?utm_source=chatgpt.com
・契約モデルの理解:on call は「スポットプラン(基本月額+利用時加算)」があるなど柔軟な契約が可能。
https://oncall-japan.com/service/?utm_source=chatgpt.com
・地域カバー:スタートアップのサービスが親の住んでいる地域をカバーしているかを確認。on call は現在、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)を中心に展開。
https://oncall-japan.com/service/?utm_source=chatgpt.com
・相互補完の仕組み作り:伝統的な警備会社(ALSOK・セコム)+ベンチャーの在宅医療代行企業という組み合わせは強力。
警備会社は生活安全や安否確認、ベンチャー企業は医療トリガーや診療という役割分担が可能。
・コストと透明性:スタートアップはまだ価格体系が明確でない、あるいは変動しやすい可能性があります。
家族として導入時には見積もり、運用コスト、想定利用頻度を明確にし、予算内に収める計画を立てるべきです。
・契約更新・継続性のリスク:ベンチャーは成長・変化が速いため、サービスが変わったり撤退したりする可能性もあります。
そのため、契約時には解約条件や代替サービスの検討も併せて行っておくと安心です。
離れて暮らす親介護において、従来のセキュリティ会社だけでなく、スタートアップ企業が提供する在宅医療かけつけサービスをネットワークに加えることは、新しい安心の形を作る有力な手段です。
on call の往診代行や Doctor Mate の夜間看護サポート、CareMaker による訪問計画最適化など、ベンチャーならではの柔軟さと効率性があります。
まずはこれらの企業をリストに加え、親の住む地域や想定される緊急シナリオに応じて、どのスタートアップがかけつけネットワークに適しているかを検討し、よりきめ細かく、将来を見据えた安心構造を築く一歩になるのではないでしょうか?
