親介護が変わる。今、注目の介護家電 ――ダブルケアラーの暮らしを救うテクノロジーの力――

番号 80

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負担軽減に役立つ、最新介護家電

先日、高齢者の冷蔵庫の開閉データを分析して生活リズムの異変を知らせるという見守り家電のニュースを見ました。

大手通信企業と家電メーカーが共同で取り組むプロジェクトで、冷蔵庫の扉が一日中開いていないと「いつもと違う」ことを家族に通知する仕組みが紹介されていました。

取材を受けていた女性は、離れた地域で暮らす80代の母を見守っていると話し、最近では朝に冷蔵庫が開かないと通知が来て、電話すると「実は具合が悪くて起き上がれなかった」と話していたというエピソードも報じられていました。

記者は「在宅の親介護にIoT家電を活用するケースが急増している」と説明し、高齢者の単身世帯が増える中で、家電による見守りが“社会インフラ”になりつつあるとまとめていました。

厚生労働省の統計でも、ひとり暮らし高齢者は2020年に約712万人、2040年には1,060万人に増える見通しとされています。

つまり、家族が毎日見に行けない状況は「例外」ではなく「普通」になっているのです。
とくにダブルケアラー――つまり親介護と子育てや仕事を同時に抱える人にとって、見守り家電は“自分を守る盾”にもなるからです。
ダブルケアラーは全国で約26万人とされ、実際にはもっと多いと言われています。

仕事の合間に親の様子を気にし、夜中に何度も電話し、休日は介護と育児に追われて自分の時間がない。
そんな生活を送る人にとって「家電が代わりに見守ってくれる」というのは、単なる便利さではなく、“安心の基盤”そのものです。

ニュースで見た女性のように、たった一度の「いつもと違う」を知らせてくれるだけで、親の命が守られることもあります。

そして、このテクノロジーは高価で難しい機械ではなく、家電として普通に売られているものであり、親介護と仕事の両立が社会全体の課題になる中で、今、注目すべき介護家電は確実に増え、手軽に買える‟便利アイテム”であるといえます。

なぜ「介護家電」がダブルケアラーの生活を救うのか

介護家電というと「便利グッズ」という印象がありますが、実際には生活を支える“仕組み”として機能します。

厚労省のデータでは、家族介護者の**精神的負担のトップは「常に状態を気にし続けること」**とされています。
つまり、介護は“身体的負担”より“精神的ストレス”が大きいのです。

そしてダブルケアラーの場合、このストレスが二重・三重になります。
仕事中に「今日はちゃんと起きているかな」「転んでいないかな」と気にし続けることで注意力も落ち、さらに子供のケアを両立させようとすれば、生産性は低下し、最悪の場合共倒れになるようなことも起きかねません。

介護家電は、この“常時監視の負担”を自動化してくれます。
たとえば生活センサーは動きがなければスマホに通知をくれますし、排泄センサーは夜中に濡れたタイミングを知らせてくれます。

「異常があれば通知が来る」という前提があるだけで、人は安心できるのです。
心理学では「不確実性はストレスの最大要因」とされますが、介護家電は不確実性を減らす装置でもあります。

また、データは嘘をつきません。
「最近、動きが少ない」「夜間に起きる回数が増えた」
こうした定量的な変化は、介護状態を早期に察知するのに非常に役立ちます。

家族が気づけない小さな変化でも、センサーは正確に記録してくれます。
これは、ダブルケアラーが“早期介入”できる環境を作るうえで非常に重要です。

実際に、私が取材した40代の女性は、母親の生活リズムが乱れてきたことを見守りセンサーのデータで知り、受診につなげた結果、早期の軽度肺炎が見つかりました。

「家電がなかったら見逃していたと思う」と彼女は話していました。

親介護において、見守り家電は“命を救う技術”なのです。

今注目の介護家電5選

ここでは、話題の介護家電を厳選して紹介します。
どれも高齢の親が扱いやすく、家族が遠隔で安心できるものばかりです。

① ネコリコ まもりこ
 冷蔵庫・トイレ・玄関などの動きを感知し、生活リズムの異常を通知する見守り家電。
 URL:https://www.necolico.co.jp/mamolico/

② ひとり暮らしのおまもり
 人感センサーで一定時間動きがないと通知。
 URL:https://hitori-omamori.jp/

③ ふとんの上から測れる排尿センサー わかるにょん はかるにょん
 受信機を近づけるだけで濡れ具合がLEDライトや数値で表示。
 URL:https://www.nissei-kk.co.jp/nyon/

④ パナソニック 人感センサー KX-HJS200-W
 夜間の徘徊や転倒のサインをすぐ検知。
 URL:https://panasonic.jp/hns/products/KX-HJS200.html

⑤ LASHIC-room
 温度・湿度・活動量をセンシングし、異常時は通知。
 URL:https://lashic.jp/room/

これらの家電で「異常を見逃さない」ことによって、介護家族の体力的な負担はもとより、精神的負担軽減にも役立つことが期待できます。

介護家電を暮らしに定着させるための実践ガイド

介護家電を導入しても、親が使いこなせなければ意味がありません。

実際、80代の高齢者のスマホ所有率は60%ほどですが、IoT家電の操作はほとんど必要なく、設定は家族が行い、親は“いつも通り生活するだけ”のものが増えています。

導入のポイントは以下の3つです。

1.小さく始めること(まずは1つ)
 センサーひとつでも劇的に安心が増えます。

2.親に「監視されている感」を与えないこと
 「心配だからではなく、安心のために」と説明するのがコツです。

3.データを見て“変化を発見”する習慣を作ること
 介護家電は日記のようなものです。変化は必ず予兆として現れます。

ある家電が記録したデータでは「夜中のトイレ回数が増えている」ことに気づき、結果として前立腺肥大を早期発見できたと話していた男性がいました。
「家族より先に気づく家電は家族の一員」と笑っていました。

ダブルケアラーは、“親の人生”と“自分の人生”を同時に守らねばなりません。
しかし、どれほど頑張っても人間には限界があります。
自分を犠牲にして続ける介護は、長く続きません。

介護家電は、あなたの代わりに見守り、気づき、知らせてくれる存在です
それは、親の生活を守り、あなたの人生も守るための“現代の介護のかたち”といえるのではないでしょうか?

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