知って得する!認知症ケアに役立つ見守り機器・ICT導入を支える補助制度ガイド
番号 78
認知症在宅介護の見守り機器やICTサービス導入を支援する補助制度
先日、朝のニュース番組で「東京都杉並区が高齢者向けに見守り機器の導入を支援する新制度を開始した」という報道を見ました。
内容は、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯を対象に、IoT機器や通信型センサーを自宅に設置する際、その費用の一部を区が補助するというものです。
見守りカメラや人感センサー、ドア開閉センサーなど、介護家族が「外出中でもスマホで様子を確認できる」機器が補助対象に含まれており、区の担当者は「家族の不安を少しでも軽減したい」とコメントしていました。
このニュースを見て、私は改めて「補助制度を知ることの重要性」を感じました。
認知症のある方を在宅で介護するご家族の多くは、24時間体制で“目が離せない”生活を送っています。
夜間の徘徊、転倒、外出時の迷子——こうした「もしも」のリスクを常に意識しながら、仕事や家事、子育てと両立している方も少なくありません。
しかし、技術の進化によって、これらの不安を少しずつ軽減できる時代になりました。
IoTやAIを活用した見守り機器は、遠隔からでも安否や生活リズムの変化を察知できるため、介護家族の安心を大きく支えます。
ただし、現実には「導入したいけれど費用が高い」「どのサービスを選べばいいか分からない」と感じている方が多いのも事実です。
実際、ある調査によると、見守りサービスを検討した家族のうち約6割が「費用負担」を理由に導入を見送ったと回答しています。
そんな中、全国の自治体が少しずつ始めているのが、見守り機器やICT導入を支援する補助制度です。
機器購入費や設置費、あるいは月額利用料の一部を助成することで、家族が導入をためらう“経済的な壁”を下げる取り組みが広がっています。
このような制度は、単にお金を支援するだけではありません。家族の「安心したい」という気持ちを社会全体で支える仕組みであり、地域ぐるみの“見守りネットワーク”を形成する基盤でもあります。
ニュースで紹介された高齢者の女性は、導入後に「遠くに住む息子と、毎日安心して連絡を取り合えるようになった」と話していました。
その話す姿を見て、技術と制度が交わることで初めて実現する“暮らしの安心”があるのだと実感しました。
これからの介護は、家族の努力だけで支える時代ではなくなりつつあります。
まさに制度を正しく知り、活用することが、介護の質と心の余裕を生み出す鍵になっているといえます。

主な補助制度の内容と利用のポイント
特に認知症の家族にとって見守りIT機器はもはや必須のアイテムとなっているにも関わらず、現実には「機器・サービスの価格」「設置・運用の手間」「継続コストの不安」などが導入を阻む要因となっています。
そこで、国家・自治体が「補助制度(補助金・助成金)」を設け、利用者・事業者双方の導入ハードルを下げる仕組みを整えています。
理論的には、これは「社会的セーフティネットとしての技術導入支援」と言え、被ケア者・ケア者の安心と自立支援を両立させるための政策的枠組みです。
では、認知症ケア・見守り機器・ICT導入に関連する代表的な補助制度をについてご家族・介護者がどう活用できるかも含めチェックしてみました。
■補助制度の種類・代表例
1. 在宅高齢者向け見守りサービス補助(自治体個別)
例:横浜市の「高齢者見守りサービス」では、65歳以上のひとり暮らしの方を対象に、「登録見守りサービスを利用した月額費用の一部を補助」しています。補助額は月額最大1,000円です。
また、渋谷区の「高齢者見守りサービス」では、選定されたIoT機器を導入した場合、機器の初期費用+1年分の月額利用料が無料という制度もあります。
こうした制度は、被ケア者本人・家族の「まずは気軽に始められる安心の一歩」となり得ます。
2. 見守りICT機器導入費用助成(自治体)
例:練馬区の助成制度では、区内在住・65歳以上の高齢者が、区が指定する見守りICT機器を導入した場合に、費用の一部が助成されます。
自治体によっては「機器本体+設置費用」「通信費の一部」などが対象になることもあり、導入検討時に“助成対象機器”かどうか確認することが大切です。
3. 施設・事業所向け介護ロボット・ICT導入支援補助
見守りセンサー・カメラ・ICT記録機器などを施設・在宅サービス事業所が導入する際、国・都道府県レベルで補助金が出されています。
例:ある制度では「見守りセンサー導入1台あたり上限30万円」「1事業所あたり通信環境整備費上限750万円」という補助額の例があります。
この制度は主に介護サービス提供側が対象ですが、在宅ケア環境でも“サービス事業者が機器導入して貸与する形”を通じて間接的に恩恵を受けられることがあります。
【利用のポイント・チェックリスト】
• 対象となる機器・サービス範囲を確認:機器の種類(センサー、カメラ、位置情報端末等)、設置場所、通信費などを含むかどうか。
• 対象となる利用者の条件を確認:年齢、居住形態(ひとり暮らし、高齢者のみ世帯等)、介護認定の有無、同居者の有無など。例:横浜市では「65歳以上のひとり暮らし」で他の見守りサービス未利用という条件あり。
• 補助・助成の額・期間を確認:月額補助、初期費用補助、利用開始から1年間など、自治体により異なります。
• 申請手続き・契約形態を確認:サービス提供事業者と契約する形、機器購入と設置後申請、事前申請が必要など条件があります。
例:葛飾区では「サービス提供事業者が設置・貸与する機器」の初期設置費用の9割を助成。
• 継続利用・更新条件を確認:助成対象となった後も継続契約が必要な場合や、更新時の要件がある場合もあります。
• サービス提供事業者・機器の対応・補助対象リストを確認:区が指定する機器か、事業者登録が必要かなどを確認することで、申請がスムーズです。例:練馬区では区が指定する機器一覧あり。

介護家族としての活用戦略―制度を暮らしにどう組み込むか
介護家族として、制度を知るだけではなく “暮らしに活かす視点” が重要だと考えます。
以下に活かすポイントを整理してみました。
1. 導入タイミングを捉える
認知症のある方が“そろそろ見守りが必要かも”と感じたとき、補助制度の活用を検討することが有効です。
例えば、「夜間に一人でトイレに行くのが不安になってきた」「外出中の位置が分からないと感じる機会が増えた」などのタイミングです。
機器導入前に補助制度を確認し、自治体窓口への相談を早めに行うと、手続きがスムーズに進みます。
2. 利用者(被ケア者)・家族双方の安心を考慮
補助制度を活用して見守り機器を導入することで、被ケア者本人は「見守られている安心」を、家族は「離れていても状況が分かる安心」を得られます。
特に認知症ケアでは、夜間・外出・転倒リスクが重大なため、見守り開始が早ければ早いほど「未然対応」の可能性が高まります。
補助制度を活用してコストハードルを下げることで、より早期の導入が現実的になります。
3. 制度活用による継続利用の視点
制度を活用して導入した後、継続して使うことが成果につながります。そのためには、
• 補助対象機器・サービスが継続契約できるかを確認
• 1年後・2年後にも利用可能な月額料金が支払えるか検討
• 機器の設置・メンテナンス・通信環境の確認を行う
という手順が重要です。補助制度によって導入ハードルが下がっていても、運用が続かないと安心の持続にはなりません。
4. 地域・自治体の特徴を活かす
補助制度は地域・自治体によって内容が大きく異なります。
例えば、東京都のある区では「12か月分の月額料金無料+機器導入補助」、一方で埼玉県狭山市では「見守りサービス導入時の費用上限7,000円補助」といった違いがあります。
そのため、ご自身の居住地の自治体・福祉課/高齢者支援窓口に最新情報を確認することが第一歩です。
また、地域包括支援センターや介護事業者に相談することで、制度申請の支援を受けられることもあります。

これからの展望と制度をめぐる課題
補助制度を知り・活用することは一歩ですが、今後の展望とともに介護家族として意識すべき課題も整理します。
■将来展望
• IT・IoT・AIを活用した見守り技術が進化しており、これらの導入を後押しする制度も拡充傾向にあります。
例えば、施設向けの「介護テクノロジー導入支援補助金」や「見守りシステム導入補助金」の予算規模が増加しています。
• 在宅ケア領域でも、ひとり暮らし高齢者・認知症高齢者を支えるため、見守りネットワークの構築・ICT導入が地域レベルで強化されています。
• 補助制度そのものも「機器購入・設置」だけでなく「通信費」「サービス月額」「更新導入」など運用面まで支える方向に変化しつつあります。
■制度をめぐる主な課題
• 対象範囲の限定性:制度が「ひとり暮らし65歳以上」「高齢者のみ世帯」「要支援・要介護認定あり」などに限定されていることがあります。例えば、立川市の「あんしん見守り支援事業」も対象者条件が定められています。
• 申請・契約の手続きの煩雑さ:機器設置前の申請や、指定機器・指定事業者との契約が必要な場合があります。これが導入をためらう理由の一つです。
• 継続コストの部分が未補助:導入時は補助があるものの、月額サービス・通信費が継続してかかる場合、長期運用が不安になるケースがあります。
• 情報の更新・把握難:自治体ごとに制度内容・募集期間・対象機器が異なり、住んでいる地域の最新情報を自分で調べる必要があります。
• 技術・機器とのミスマッチ:補助対象機器でも、実際の住環境・本人の状況に適合しないと“使われずに終わる”リスクがあります。制度を活かすためには、機器選定・設置・運用体制をケア家族として整理しておくことが重要です。
■介護家族としての備え
• 自宅・居住環境にあった機器(センサー、位置情報、見守りカメラ等)を検討し、その機器が補助対象か自治体で確認する。
• 補助制度の申請期限・募集時期(多くの自治体で年度内に募集)を把握し、「次年度に持ち越せない」可能性を早めに認識する。
• 機器導入だけで安心せず、「誰が通知を受け取るか」「異常時にどう対応するか」「運用継続できるか」を家族・支援者で話し合う。
• 地域包括支援センター・福祉課・介護事業者に相談し、制度活用の支援を受ける。
• 補助を活用して導入した後も、定期的に見直し・機器動作確認・契約内容の更新を行い、「安心して使い続けられる」状態を維持する。
認知症のあるご家族を支えるための「安心」は、技術だけでなく“制度・支援体制”も大きな役割を果たします。
見守り機器・ICTサービス導入を支える補助制度を知ることで、家族が抱える「もしも」の不安を少しでも軽くできる可能性があります。
大切なのは、制度を“知る”だけで終わらせず、“暮らしに実装する”ことであり、そのためには、住まい・本人・家族の状況を整理し、申請・導入・運用までを見据えて準備することが、親介護成功の鍵となるのではないでしょうか?

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🔗【本文中で紹介した公式・参考サイト一覧】
◆ 自治体の高齢者見守り・ICT導入補助制度
• 横浜市「高齢者見守りサービス」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigohoken-igai-service/zaitaku-yoengo-shien/mimamori.html
• 渋谷区「高齢者見守りサービス」
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kenko/koreisha-seikatsu/koreisha-zaitaku/mimamori_sa-bisu.html
• 練馬区「見守りICT機器導入費用助成」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/koreisha/nichijo/mimamoriict.html
• 葛飾区「高齢者見守りサービス導入助成」
https://www.city.katsushika.lg.jp/kenkou/1000052/1030186/1002141/1014681.html
• 立川市「あんしん見守り支援事業」
https://www.city.tachikawa.lg.jp/kenko/korei/1003482/1003506.html
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◆ 参考情報・補助制度まとめサイト(公的・専門情報)
• 介護ロボット・ICT導入支援補助金(CoMimi コミミ)
https://comimi.jp/archives/column/monitoring-subsidy
• 高齢者見守りサービス補助制度まとめ(スマート補助金)
https://www.smart-hojokin.jp/subsidies/53611
• 介護・福祉業界ニュース(Care News)
https://www.care-news.jp/useful/L9eKI
• 地域における見守りネットワーク構築(AI Government Portal)
https://ai-government-portal.com/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%A6%8B%E5%AE%88%E3%82%8A%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%A7%8B%E7%AF%89
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