子育ても介護も、知っておきたい“お金の助け舟” ~ダブルケアラーが使える補助金と控除~

番号 77

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制度の“抜け・使い残し”を防いで、可処分所得と時間の最大化を

先日、「重なる育児と介護『正社員は諦めた “2人目”も諦めた』数年後に2割以上が“ダブルケアラー”に?逃げられない現実をまずは知ってもらいたい」――ニュースの見出しを目にしました。

晴れやかに迎えた子どもと、年老いた親の介護が同じタイミングでやってくる。
そんな「育児+介護」を一手に引き受ける“ダブルケア”の現実が、社会を覆い尽くし多くのご家庭で歪を生んでいるといいます。

晩婚化や少子高齢化が進む中、現役世代が子どもを育てながら、同時に親や義親の介護にも対応せざるをえない――こうした状況に、制度の側が追いついていないという問題も浮き彫りになってきました。

実際、私の同僚のご家庭でも、育児と介護二つの“ケア”が重なり2人の子供と一緒に、田舎のご実家へ引っ越し、2世帯住宅で暮らしているご家族がいますが、役職者だった同僚は、フルリモート勤務を許された代わりに一般職へ降格になり、給料ダダ下がりの上、会社の主流となるプロジェクトには参加はするものの、決済はモレなく蚊帳の外という状態になりました。

また、ベンチャー企業の正社員だった奥様は夫の地元の工場のパート勤務になりましたが、車社会の田舎暮らしで朝と晩は子供や義理親達の送迎をひたすら行い、さらに仕事以外の一切の家事を切り盛りする毎日となり、国立大学のキャリアなど見る影もなく、夫婦共々「私達の人生は一体何なんだろうか?」と途方に暮れる毎日を過ごしています。

そんなダブルケアラーの方々が、せめてお金面だけでも色々を諦めず、希望が持てそうな “知っておいて損はない”「補助金」「控除」の制度をチェックしてみました。

ダブルケアの現状と制度活用の意義

ダブルケアとは、まさに「育児(子ども)と介護(親または親族)を同時に担う」状態をいいます。

日本での調査によれば、「ダブルケアに直面している/または直面したことがある人」が全体の約77.7 %に上るという報告もあります。

このような状況下では、時間的制約・心理的負担・経済的負担が三重にのしかかるため、補助金や控除といった制度を使いこなす意義が極めて高くなります。
例えば、介護と子育ての両方を抱える世帯では「仕事を減らす」「離職を検討する」という選択肢を迫られることも少なくありません。先述のニュース内でも「正社員を諦めた」「2人目を諦めた」といった声が紹介されていました。

制度の活用は、単に“金銭的な助け”にとどまりません。
時間を確保し、仕事と両立しながら“ケアを担う”ための環境づくりとも言えます。たとえば、国が示す政策の中でも“ダブルケアラー支援”の必要性が明記されています。

こうしてみると、ダブルケアに直面している現役世代にとって、「補助金を知る」「控除を申請できる」ことは単なる税務知識ではなく、“生活設計”そのものに直結するテーマであるといえます。

しかしながら、制度の存在自体を知らなかったり、手続きの煩雑さや制度に合致する基準が厳しかったりなど、利用率が低くなっている現状も見受けられます。

せっかく、ご自身が享受できる権利を持っているにも関わらず、詳しく知るチャンスや会社に利用するチャンスを逃し、非常にもったない状況になっている可能性も大いに考えられるのです。

使える補助金・助成金の整理

ダブルケアを行う方が使える代表的な補助金・助成を紹介します。
対象や申請条件には自治体差・年度差がありますので、必ず最新情報を確認して下さい。

■両立支援等助成金(両立支援等助成金)
こちらは働く人が「育児・介護と仕事の両立」に取り組む事業主・労働者を支援するための制度です。

・例えば「介護離職防止支援コース」など、介護を理由として離職しないよう企業が制度整備を行った場合に支給されるものです。

・2025年度以降、電子申請化やコースの改正が進んでいます。例えば令和5年6月26日から電子申請対象となった例も。

ダブルケアの立場から見ると、自身が労働者であれば、勤務先が該当制度を整備しているか確認する価値があります。
勤務時間の調整、在宅勤務、短時間勤務制度の導入などが助成対象になる可能性があります。

■地方自治体による支援・相談窓口
たとえば、越谷市(埼玉県)では「子育て中のケアラー(ダブルケア)の方が利用できる支援」という案内をしています。

・子育ての一時預かり、保育施設送迎、急な預かり。
・介護・高齢者に関する相談窓口(地域包括支援センター等)。

こうした“地域ベース”の支援を把握しておくことが、制度活用の第一歩です。

■補助金・助成の“隠れた”活用場面
また、「補助金」として目に見えにくいものもあります。
たとえば、子育てサービス・介護サービスを利用する際、自治体が実施する「一時預かり費助成」「見守りサービス補助」などが該当します。

さらに、制度の“縦割り”が壁になっており、ダブルケアを対象としたワンストップ型支援が十分に機能していないという課題も報じられています。

これを踏まえると、補助金活用にあたっては「育児」「介護」「仕事」の三軸を横断的に見て、“抜け”を作らないことが大切です。

控除・税制優遇を知り使おう

制度活用は補助金だけではありません。税制優遇・控除を上手に使うことで、可処分所得を増やしやすくなります。

■扶養控除・障害者控除・医療費控除
たとえば、親を扶養に入れた場合の扶養控除・別居していても可というケースがあります。
また、要介護状態の親を扶養して控除を受けられる「ダブル控除」の可能性も指摘されています。

さらに、介護費用・医療費を合わせて「医療費控除」の対象にすることで、税金が還付されたという事例も報じられています。

これらをダブルケアの文脈で見ると――「子育て+介護」という二重の負担を抱える方が、控除を“知らずに使っていない”と、実質的には大きな損をしている可能性が高いと言えます。

■仕事と介護・育児両立の税制支援(制度案段階含む)
また、今後の制度改正の動きとして、育児・介護の両立に対して税制優遇措置を導入するという報道もあります。
たとえば「介護家族に対して最大50万円の特別税額控除を導入」という制度案が紹介されています。

これはまだ確定した制度とは言えませんが、両立支援の流れを捉えておくという意味では重要です。

■控除活用のポイント
控除を確実に活用するためには次のようなポイントがあります:

・自分・配偶者・親・子が“生計を一にしている”かどうか整理する。
・親の年金収入・所得が扶養範囲内か確認する。
・介護費用・医療費は領収書を保管し、確定申告でまとめて申請する。
・控除対象の可否・金額の上限を知り、見落としを防ぐ。

こうして制度を前もって知っておくだけで、“年末調整あるいは確定申告”という場面で、焦らずに準備できます。

制度活用へ向けた実践ステップと注意点

ダブルケアラーとして制度を“使える状態”にするための実践ステップと、注意すべき点を整理します。

■実践ステップ
・自身のケア状況を整理する
 - 子育て(子どもの年齢、保育・学童サービス利用状況)
 - 介護(親・義親の要介護認定、在宅サービス利用、介護費用)
 - 仕事(勤務形態、在宅勤務・時短勤務の有無、今後の見通し)
 この整理により、どの制度が“使える/使えない”かが明確になります。

・制度・控除の適用対象を調べる
 - 補助金/助成金:労働局、自治体・市区町村の福祉課・子育て課などの情報。
 - 控除:国税庁・確定申告案内・ファイナンシャルプランナーの情報。
  例えば、扶養控除の対象となる親の年金収入や所得の上限など。
 - “ダブルケア”を前提とした支援制度の有無(地域によりばらつきあり)。

・手続きを整える
 - 補助金/助成金は申請期限・必要書類(勤務証明、介護証明、保育利用証明など)があるため、早めの確認が重要。
 - 控除は確定申告または年末調整が関係するため、領収書・証明書類を保管。介護費用、医療費、保険料など。
 - 仕事の両立支援制度が勤務先にあるか(在宅勤務・時短勤務・介護休業)を確認し、必要に応じて上司・労務部門と相談。

・継続的に見直す
 子ども年齢の変化、親の介護度の変化、仕事の勤務形態の変更などにより、「使える/使えない」制度が変わる可能性があります。毎年確認するクセをつけましょう。

■注意点・落とし穴
制度が“育児用”“介護用”というように縦割りになっており、「育児+介護」のような複合的な状態(ダブルケア)を想定していない制度もあります。

補助金・助成金には申請時期・利用条件(勤務先や利用サービス、家庭の所得水準など)が細かく設定されており、知らないまま期限を逃すケースがあります。

控除を受けるためには「扶養している親の所得」「生計を一にしている」という要件が伴うため、親と別居している・金銭支援だけしているというケースでは注意が必要です。

制度の改正・改廃が起こりうる分野であり、常に最新情報をチェックすることが肝要です。
特に働き方・両立支援制度・テレワーク制度などの変化が影響します。

子育ても介護も、「いつまた」「どのように」始まるかを確定できるものではありません。

“ダブルケア”という重複負担の状況だからこそ、「知っておく制度」「使える制度」「申請する制度」が生活設計の大きな支えになります。

補助金・助成金・税制控除を活用することは、単に“お金を節約する”という次元だけでなく、「時間の確保」「働き方の選択肢維持」「心のゆとり」を得るための“支え”でもあります。

年末控除も差し迫った今、最寄りの自治体へ使える制度を是非チェックしてみてはいかがでしょうか?

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