ケアマネが消える!?親の介護、あなたはどう守る?

番号 74

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居宅支援が届かない“未来”を回避するための必要な子世代の‟備え”とは?

先日、ケアマネジャーの減少についてのニュースを目にし、胸が締めつけられる思いがしました。

私も過去に担当して頂いた超ベテランケアマネが、まるでもう一人の家族のように付き合ってくださったからこそ、義父も含めた3人の親の介護が無事に過ごせた経験もあり、その尊さを痛切に感じています。

ケアマネジャーの従事者数は 2018年度の約189,754人 をピークに、2022年度には 約183,278人 にまで落ち込んでいるそうで、4年間で約6,500人も減少しているといいます。

また、ケアマネジャーの資格保有者(登録者数)と、実際に業務に従事している者の乖離も大きな指摘があり、ある資料によれば、登録者数は約96.9万人に達している一方、実際に従事しているケアマネは2019年時点で約22.5万人という推計もあるそうです。

さらに、居宅介護支援事業所数も2018年の45,025件 から 2024年には41,726件 まで減少したといい、なんと一つもないという自治体も紹介され、悲惨な現状に啞然としました。

例えば、要介護の親を在宅介護をする時、通常であればケアマネが適切なケアプランを作り、訪問介護やデイサービス、福祉用具などを調整してくれます。

しかし、ケアマネが不足している地域では当然こうした調整が遅れ、サービスが受けられない日が増えてしまいます。
デイサービスに入れず、外出の機会が減り、体力や認知機能が低下します。
訪問介護も調整に時間がかかるため、入浴や食事のサポートが後回しになり、生活の質が急速に下がることは容易に想像できます。

さらに、家族である子世代の負担も増大します。
ケアマネがいないため、医療・福祉・行政の手続きを自分たちで調整しなければならず、仕事や家庭生活との両立はほぼ不可能になります。

先の事業所が一つもないような地域によっては「ケアマネがいないために介護サービス自体を受けられない」という状況が現実となり、最悪の場合、親を施設に預けることすら困難になるかもしれません。

また、自治体や地域が少しずつケアマネ確保策や支援制度を整えていることが紹介されていましたが、加速度的に進んでいる様子も見えず、依然減少は止まる傾向は収まらず、このまま減少傾向が続けば、地方や過疎地から順に、要介護者が安心した生活を送るための支援が届きにくくなるのです。

なぜケアマネは減るのか?

年々減り続ける中、ケアマネ1人あたりの負荷指標についても、厚生労働省の調査によれば、ケアマネが担当している利用者数やケースの複雑性は、年々増加しているとの報告があります。

たとえば、要介護・要支援の認定者、認知症・医療ニーズの高い利用者の割合増加をケアマネ自身が感じているという回答が多くあります。

また、ケアマネ不足を示す指標として、有効求人倍率が 3~4倍台 という数値も紹介されており、これはケアマネを募集してもなかなか応募がない状況を示すものとされます。

こうした指標は、単に数の問題ではなく、 業務の“質・量”の重み にも変化が起きていることを示唆します。

ではなぜケアマネが減少し続けるのか?それは、単一の要因によるものではないようです。
以降に挙げる、複数の要因が相互に影響し合いながら、ケアマネの減少を加速させていると考えられています。

減少の要因①:資格取得・参入のハードルの上昇

まず挙げられるのが、ケアマネになるための道筋が厳しくなっていることが、参入を阻む要因としてしばしば指摘されています。

ケアマネになるには、まず介護福祉士などの前提資格を取得し、実務経験(多くの場合5年以上)を経て、ケアマネ試験に合格し、さらに実務研修を修了する必要があります。こうした過程は、時間・コストともに大きな負担です。

受験要件の厳格化が一因との指摘もあります。
たとえば、平成30年度(2018年度)以降、実務経験要件などが見直され、受験者数が大きく減少したという指摘があります。

実務研修の更新も負担となっています。
たとえば、5年ごとの更新研修の義務があり、88時間程度の研修を課すケースや、研修費用・移動負担などが重くのしかかるという声があります。

これらの要因が「若年層が手を挙げづらい」「途中離脱が起きやすい」構造を生んでいると考えられます。

減少の要因②: 処遇・待遇・労働環境の問題

ケアマネの業務には責任・調整力・専門性が求められるにもかかわらず、その 報酬・待遇がそれに見合わないという批判が根強くあります。

ケアマネは、利用者調整、関係者折衝、プラン作成、モニタリング、記録・報告書作成など多岐にわたる業務をこなします。
しかし、こうした業務量・負荷に比して、 報酬・給与の伸びが限定的 であるという指摘があります。

さらに、処遇改善加算の対象外とされていることが、待遇改善を阻む制度的制約になっています。
2024年の改定でも、ケアマネに対する処遇改善加算は見送られたという報道があります。

労働環境面では、在宅を含む訪問型業務による移動時間、夜間・休日の緊急対応、事務仕事の増加、記録義務の増大などがストレス要因とされています。
特に “モレや見落としが許されない” 業務性質から、心理的負荷が高いという声もあります。

また、ケアマネが過重労働になると離職意向が高まるという調査もあり、定着を阻む一因となっています。

こうした待遇・環境のギャップが、ケアマネという職種を “割に合わない” と感じさせ、離脱や参入抑制を招いているのです。

減少の要因③:高齢化・自然退職と後継者不足

ケアマネ自身の年齢構成・引退潮流も、大きな要因です。

先にも述べたように、ケアマネの平均年齢は50代後半に達しており、60歳以上の割合も3割を超える報道があります。
つまり、 自然退職・世代交代 の波はすでに押し寄せていると言えます。

若年層・中年層の継続参入が追いつかないため、ベテラン層が抜けた後を補う構造が形成できていないという指摘があります。

地域偏在も見られ、特に 地方・過疎地域・中山間地域 では、新しいケアマネが確保できず、退職が埋められないという厳しい現場もあります。

また、事業所が統廃合・閉鎖される中で、ケアマネが働く“場”自体が減っていることも、退職や転職を誘引する要因とされています。

このように、 ベテラン層の引退+若年層の参入不足 という構図が、ケアマネ減少の構造的背景となっています。

減少の要因④:制度・政策的課題・制度設計ミス

制度・政策側の構造的制約も無視できません。

ケアマネの処遇改善加算を適用対象外とした政策判断が、待遇改善のハードルを作っているとの批判があります。
ケアマネの研修制度・更新制度の硬直化も課題とされています。
たとえば、研修制度の内容・頻度、研修場所や費用・交通負担などが、現場にとって重荷になっているという声があります。

ケアマネ試験や実務研修制度の改定時に、受験要件が厳しくなったことが参入者数を抑制したという指摘があります。
制度設計の“逆説的な効果”も指摘されます。

例えば、介護職の処遇改善策が進んだことにより、介護現場職員とケアマネとの処遇差が縮まった結果、 “転職してケアマネを目指すメリットが薄れた” という仮説もあります。

また、制度改正における検討プロセスが現場の声を十分反映していないという批判もあります。
業界団体・省庁・自治体間の利害や力量差が、時として現場実態と乖離した制度設計を生むことがあり得る、との指摘です。

このように、政策・制度設計が現場実態に十分寄り添っていない ことが、ケアマネ減少を加速させる一因と考えられます。

減少の要因⑤:社会的認知・魅力づけの課題

最後に、ケアマネという職の“魅力”という観点も無視できません。

ケアマネは「介護現場の司令塔」「生活支援・調整のキーマン」など、非常に重要な仕事ですが、 社会の認知度 は必ずしも高くありません。
介護職全体と比較して、専門性や責任の重さが十分理解されていないという声があります。

若い世代にとって、キャリア・昇進・ワークライフバランスという点で“目指したい職業”と感じられるかどうかが、参入動機に影響します。
ケアマネが「ブラック・重労働/事務ばかり」というイメージを持たれてしまうと、志望者を減らす可能性があります。

加えて、ICT・DX化・業務効率化が進まなければ、過剰な負荷・非効率業務が残り、職場魅力度を下げてしまいます。現場からは「記録・申請作業が煩雑で負担」「紙・手作業が残る」などの改善要求が出ています。
これら要因は、ケアマネという職を“選ばれにくい職業”にしてしまっており、減少を部分的に説明する要素と言えるでしょう。

介護保険サービスを利用したくても、 ケアマネが付かないためにサービスを利用できない という「介護難民」にならないよう、早めに情報収集をすることが負担回避のカギになるのではないでしょうか?

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