ますます進化する宅食の"ラストワンマイル・デリバリー"とは?
番号 72

栄養を確実に届ける命綱
先日、セブンイレブンとANAがドローンで離島などに配達する実証実験のニュースを見ました。
『アツアツおでんをこぼさず届ける』
とコンビニおでんをこよなく愛する私にとっては胸踊る要素しかない見出しがそこにはありました。
昨今、たくさんの宅食サービスが存在していますが、山間部や離島などへ配達できる物流網を持つ企業は少なく、また遠距離だと割増料金で高くついてしまったり、味の質が低下してしまったりなど、以前から流通に関する課題はありました。
2022年12月の改正航空法でドローンの有人地帯での目視外飛行(レベル4:操縦者がドローンを直接見ることなく飛行させる運用形態)が可能になり、ドローン配送サービスが急速に伸びているといいます。
高齢者向け宅食は単に食事を届けるだけでなく、健康管理、安否確認、孤立防止など、複数の社会課題を同時に支える存在へと進化しています。
そして、その進化を支えるキーワードのひとつが"ラストワンマイル・デリバリー"という仕組みであるといいます。
ラストワンマイルデリバリーが進化する背景
ラストワンマイル・デリバリーとは、物流の最終区間、つまり配送拠点から利用者の手元まで商品を届ける仕組みを指します。
宅食においては、注文された食事を最終拠点(店舗や倉庫など)から顧客の自宅まで届ける、配送プロセスの最終段階を指し、このラストワンマイルが宅食の品質と満足度を大きく左右するといいます。
時間通りに配達されなければ、栄養バランスが保てないだけでなく、体調変化の早期発見や安否確認の機会も失われてしまいます。
そのため、高齢者向け宅食では、配送の信頼性と効率化の両立が重要課題となっています。
先のドローン以外にも近年、ラストワンマイルの改善を目的に、さまざまな技術革新が導入されています。
⚫︎ 自動配送ロボット
都市部では、自動走行ロボットを活用した取り組みが拡大しています。
例えば東京都内や神奈川県で行われている実証実験では、歩道を走行する小型ロボットがマンションや戸建てへ弁当を届けています。
スマートフォンで受け取りを確認できる仕組みも整備され、接触を最小限に抑えられます。
⚫︎ データ活用による効率化
クラウド型物流管理システムにより、配送ルートの最適化や残食データの集積が可能となりました。
これにより、無駄な配送コストを削減しつつ、利用者ごとの状況を把握しやすくなりました。
⚫︎ 非接触受け取り・スマートロッカー
東京都内マンションでの宅食ロッカーの実証実験が2022年〜始まっています。
高齢者が外出していても、宅食を保冷ロッカーで受け取れる仕組みで、配送員の訪問回数を減らし効率化を図ります。
宅食とラストワンマイルの統合がもたらす価値
宅食サービスとラストワンマイル・デリバリーの統合は、単なる利便性の向上にとどまりません。次のような社会的価値をもたらします。
1. 安否確認と見守り機能
配達員が食事を届ける際、利用者の様子を確認し、異変があれば連絡する仕組みは従来からありました。
これがドローンやロボットに置き換わる場合も、センサーやカメラで安否を確認する機能を組み込むことで、同様の役割を果たすことが期待されます。
2. 地域格差の解消
前述のような、ドローンや自動配送ロボットの活用により、これまで物流が届きにくかった過疎地や離島にも宅食サービスを提供できるようになりつつあります。
これにより、高齢者の栄養格差が解消される可能性があります。
3. コスト削減と持続可能性
人手不足が深刻化する中、効率的なラストワンマイル・デリバリーは事業者にとっても持続可能性を高めます。
低コストで安定した配送が実現すれば、利用料金の抑制にもつながり、より多くの高齢者がサービスを利用できるようになります。
課題と今後の展望
技術革新が進む一方で、いくつかの課題も残されています。
1. データのプライバシーと活用ルール
安否確認や健康管理のために取得したデータの扱いには、個人情報保護と適切な運用が求められます。
2. 初期投資の負担
ロボットやドローンの導入コストはまだ高く、中小事業者にとっては参入障壁となっています。
3. “食の楽しみ”の確保
高齢者にとって、食事は栄養補給だけでなく日々の楽しみです。効率化が進む中でも、見た目や味わいを大切にする取り組みが欠かせません。
将来的には、AIが健康データと食事履歴を解析して個別メニューを提案し、ロボットやドローンが届け、医療・介護職とデータがシームレスにつながる仕組みが実現すると考えられます。
高齢者の宅食とラストワンマイル・デリバリーは、単なる物流や食事提供を超え、地域包括ケアの基盤となりつつあります。
食を通じて栄養管理や安否確認、孤立防止を支援し、さらにテクノロジーで地域格差を減らすことは、日本が直面する高齢化と人手不足の課題を同時に解決する道です。
効率と温かみを両立させた宅食サービスが広がれば、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる社会の実現に大きく近づくでしょう。
遠く離れた親の元にアツアツのみおでんを届けられる日が来るのも近いかもしれませんね。