「介護家族間の不平等さも解消⁈」 問合せ爆増中の「家族信託」の魅力
番号 67

家族信託の問合せ件数は前年比‟130%超”というデータも
先日、相続でほとんどモメなかったというご家庭の話を聞く機会がありました。
そのご家庭はお父さんが数年前に亡くなられ、持ち家や預貯金の全てをお母さんが相続していましたが、あるタイミングでお母さんが認知症の症状が出始め、自宅や預貯金の資産管理がどんどん難しくなってきていました。
友人である息子は弟の二人兄弟で、それぞれ2人ずつ子供がいる家庭で、お父さんが亡くなった後も4人の孫を連れて全家族で旅行に行くなど、非常に仲が良かったといいます。
「もし自分がこのまま‟物忘れ”が進行し、もっとお金の管理ができなくなれば、2人の子供のどちらかの家庭が負担するような事になり、仲の良いこの家族が分裂してしまうかもしれない・・」
そんな不安を抱えたお母さんは、以前から相談していた銀行の担当者に相談して、生前贈与や遺言状の作成なども考えたそうですが、今の自分の預貯金を管理してもらった方が、息子達の‟負担感”も違うのでは?と勧められた"家族信託"を利用することを決めたといいます。
その後、専門家の助言を受けながら、以下のような信託契約を設計したといいます:
- 自宅の不動産は長男が管理しする代わりに、相続の割合は長男が2/3、次男が1/3
- 貯蓄は生活費と医療費に限定して使用
- 加入している民間の介護保険内容も明確し、将来の介護費用も事前に計画
この信託により、このご家族は次のようなメリットを得たといいます:
1. 自分の意思を法的に確実に反映できる
2. 資産の適切な管理と使途の明確化
3. 家族間の思い違いのリスク軽減
一方で、デメリットとしては:
- 初期設定に約30万円の費用が必要
- 年間の信託管理費用が発生
- 柔軟性に若干の制限がある
何より印象的だったのは、この信託を行ったことによる相続が数週間で完了されるほど、家族間における‟納得感”と‟スッキリ感”が得られていることです。
「長男だから・・」とか「家が近いから・・」とか「家族で一番ヒマだろうから・・」とか理不尽な理由で親の介護や資産管理を押し付けられた挙句、相続の段になって急に「平等」を主張され、トラブルで泥沼化するケースをよく聞きます。
特に認知症のように進行すると本人の判断能力がないとみなされ、口座が不可抗力的に凍結されるリスクもあるような場合には、このお母さんのように判断できるうちに家族の納得感を得て整備できれば、後々のお金のトラブルはこれだけ回避できるのか、と感じました。
家族信託のメリット - 資産の承継
改正信託法が2007年9月に施行され「家族信託」という制度が誕生し、特に親世代が自分が築いた預貯金や資産を使って欲しい人に適切に分配できるよう自分の意志を反映して‟合法的”に管理する制度として‟終活”の一環で準備するケースが増えているといいます。
家族信託の最大の魅力は、先述の友人家族のように資産の承継をこれまでにないほどスムーズにできることです。
従来の相続は、遺言書の作成や家庭裁判所での相続手続きなど、複雑で時間のかかるプロセスでした。
しかし、家族信託なら、こうした煩雑な手続きをほぼ回避できます。
通常の相続では、相続人が遺産分割協議を行いますが、場合によってはこのタイミングで争いが生じることがあります。
一方、家族信託では、誰が、いつ、どのように資産を管理・承継するかを事前に明確に取り決めておくことができます。
具体的には、親が信託銀行や専門家と相談しながら、子どもや孫に資産を託す詳細な計画を立てられます。
例えば、「この不動産は長男が管理し、預金は次女が教育資金として活用する」といった具体的な指示を、法的に有効な形で事前に決めておくことができるのです。
これにより、相続時の家族間の混乱を防ぎ、スムーズな資産承継が可能になります。
特に、複雑な家族関係や多額の資産を持つ家庭にとって、家族信託は理想的な選択肢と言えるでしょう。
家族信託のメリット - 節税とプライバシー
次に魅力の一つとして挙げられるのが、『税金対策とプライバシー保護』といわれています。
相続税は多くの家族にとって大きな負担となりますが、家族信託はこの課題に対するスマートな解決策を提供してくれます。
例えば、親が保有する資産を信託することで、相続時の税負担を合法的に軽減できるメリットがあります。
従来の相続では高額な相続税に直面することが多いですが、家族信託は資産の移転方法を柔軟に設計できるため、税金を合理的に抑えられることが可能です。
さらに、信託を活用することで、相続税の課税対象となる資産を分散させ、税負担を軽減できるケースもあります。
例えば、不動産や預金を戦略的に信託することで、相続税の計算方法を最適化できるのです。
ただし、具体的な節税方法は個々の家庭の状況によって異なるため、税理士や専門家に相談することをおすすめします。
プライバシーの観点からも、家族信託は大きな利点があります。
通常の相続手続きは家庭裁判所で公開されるため、家族の財産状況が第三者に知られてしまう可能性がありますが、家族信託は非公開で行われるため、資産や相続の詳細を外部に知られることなく、家族内だけで管理できます。
これは、家族の経済的情報を秘密に保ちたい方にとって大きな魅力といえます。
家族信託のメリット - 家族間の争いの回避
家族信託の最も重要な利点の一つは、相続時に起こりがちな家族間の争いを未然に防ぐことです。
相続は、感情的にも経済的にも複雑な過程であり、家族の絆を壊してしまうリスクがあります。
例えば、親の遺産をめぐって兄弟姉妹が対立するケースは珍しくありません。
「誰が不動産を相続するのか」「預金はどのように分配されるのか」といった疑問が、家族間の深刻な対立を生むことがあります。
しかし、家族信託なら、こうした争いを防ぐ明確な仕組みを提供します。
また、家族信託では、資産の分配と管理について事前に詳細な取り決めができます。
例えば、先述の友人家族のように「長男と次男で◯分の1にする」や「長男は実家の不動産を管理し、長女は金融資産を受け取る」といった具体的な指示を、法的に有効な形で設定できる為、相続後に突然発生する曖昧さや不公平感を排除しやすくなります。
さらに、信託は感情的な対立を緩和する効果もあります。
遺産分割の際の透明性が高まり、誰かが得して誰かが損しているといった利害関係を排除させ、家族間におけるモヤモヤを少しでも解消できる効果が期待できます。
家族信託のメリット - 財産管理
最後に、家族信託の最も心強い特徴の一つは、障害者や未成年者の財産を安全に管理できることです。
通常、これらの方々は自身で財産を適切に管理することが難しいため、家族信託は重要な解決策となります。
例えば、障害のあるお子さんや、まだ経済的判断能力が十分でない未成年の子どもの将来を考えてみた時、家族信託を活用することで、彼らの生活に必要な資金を長期にわたって確実に守ることができます。
具体的には、不動産や預金を信託し、専門の受託者が適切に管理することで、障害者や未成年者の生活を経済的に支援できるのです。
信託の仕組みでは、資産の使途を細かく指定できます。
例えば、「教育費」「医療費」「生活費」といった具体的な目的に限定して資金を活用することが可能です。
これにより、大切な家族の資産が本来の目的以外に使われるリスクを最小限に抑えられます。
さらに、受託者は法的な責任を負うため、資産は厳格に管理され、被信託者の利益を最優先に考えて運用されるので、障害者や未成年者の将来に対する家族の想いを、法的に確実に実現できるのです。
家族信託は、単に財産を管理する仕組みというだけでなく、家族の未来を守る現代的な選択肢であるいえます。
しかしながら、メリットばかりを挙げてきましたが、初期費用やランニングコストなど慎重に検討すべき課題があります。
重要なのは「親の財産は親で管理すれば」とか「生前から相続の話なんて不謹慎」と曖昧にし続けのちにトラブルよりも早くから合法的に確認できていれば、負担をする家族は役割分担も明確になり、少しでも取り組む姿勢に‟納得感”が出るかもしれません。
資産を築き上げた本人が使途を決めることが、結局は円満にいく秘訣なのかもしれません。