最後まで“自分らしく” お墓を持たない供養のカタチ
番号 45

誰も手入れしない・・途絶えた親族が放置し続ける“無縁墓”
先日、管理者不在の荒れ放題で放置された“無縁墓”が急増しているニュースを見ました。
管理者が単身世帯で引継ぎができなかったり、故人の遺族が不在または連絡が取れなかったり、遠距離や経済的、信仰上の理由などで親族から管理を拒否されるなど、野放し状態になってしまっているケースが社会問題となっています。
総務省行政評価局の実態調査によると、公営墓地を運営する市町村の58%は、管理する親族らがいなくなった「無縁墓」を抱えているといいます。
墓地埋葬法施行規則により、長期間放置された無縁墓は、戸籍謄本などを手がかりに、親族らがいないことの確認をし尽くせば、遺骨を合葬墓などに移し、墓石を撤去できるそうですが、5年間に実行したケースはわずか6%の自治体にとどまったそうです。
実行しなかった市町村は理由として
「撤去した墓石の保管場所が確保できない」
「撤去後に親族らが現れ、賠償請求される可能性がある」
などを挙げ、法令に具体的な規定がなく「保管期間の判断に迷う」との声もあり、評価局は市町村の悩みに対処するよう厚労省に求めたそうです。
88自治体が対象の実地調査では、墓の契約者が亡くなった場合に備え、管理を受け継ぐ親族らの住所や電話番号を把握していたのはわずか10%で、運営の管理体制にも問題視する声が上がっています。
10年間で2倍になった“墓じまい”
このような背景もあり、昨今では現役の管理世代が「自分が元気なうちに自分の手でお墓を閉じたい」という“墓じまい”が終活に入れられるケースが多く見られ、厚生労働省が公開している衛生行政報告例のデータによれば、先祖代々受け継がれてきたお墓を解体・撤去して改葬する事例は平成24年度(2012年度)79,749件でありましたが、令和4年度(2022年度) では151,076件と、この10年間で2倍以上にも爆増しているといいます。
こうしたデータからも、かつては、お墓は先祖代々の伝統を継承し、家族の絆を象徴する重要な場所とされてきましたが、近年の少子高齢化、核家族化、宗教観の多様化などの社会的変化を背景として、特に年代によってお墓に対する視点に大きな違いが感じられつつあります。
多様化する"供養方法"
一般社団法人終活協議会で実施された『お墓に関する意識調査』によると、「自分が入るお墓が決まっている(48%)」と回答したのは過半数以下で、「自分が入るお墓が決まっていない(52%)」と答えた人は半数以上という結果だったそうです。
また、「入るお墓が決まっていないとしたら、どのようなお墓を希望しますか?」という質問に対して、「考えていない(23%)」という方や「散骨(10%)」「樹木葬(9%)」「納骨堂(8%)」などのお墓にとらわれない考え方を持つという人が半数以上を占めていたといいます。
この調査からお墓を持たない人が増えていて、自然葬や手元供養といった新しい形の供養が注目されているということが分かります。
お墓を持たない場合の供養方法として、以下の選択肢があります。
●散骨、樹木葬、モニュメント葬
散骨は遺骨を粉末状にし海や山へ埋葬し、樹木葬はシンボルとなる木の周辺に遺骨を埋葬する方法で、共に自然に還る供養方法です。
また、モニュメント葬は樹木の代わりに石碑を用いた墓で、季節や手入れの心配が少なく、永続的な墓として利用されています。
●永代供養墓、納骨堂
永代供養は宗教機関に管理を委託する共同の墓で、納骨堂は建物内に遺骨を納めるタイプのお墓です。
お寺や霊園が遺骨の管理を行い、供養を続けてくれます。維持管理が簡単という特徴があります。
●手元供養
自宅で遺骨を保管する方法です。
ミニ骨壷や仏具とコンパクトなものが多いため保管場所に困ることもなく、高齢でお墓参りが難しい場合でも、いつでも好きな時に自宅で供養することができます。
●合祀(ごうし)墓
複数の遺骨を一緒に納骨し.、寺院や霊園が管理します。
新しく墓石を用意したり永代使用料や管理費などが発生したりすることが基本的にはほとんどないため、一般墓と比べて費用が十分に抑えられるという利点があります。
●ゼロ葬(0葬)
火葬後に遺骨を持ち帰らない葬儀の形式です。
お墓の購入費用もかからないため、葬儀費用、お墓の購入費用を用意できない場合や遺族にできるだけ多くのお金を遺してあげたい場合は、ゼロ葬のメリットを大きく感じるかもしれません。
中年世代の実用的な視点
親世代で墓じまいやお墓を持たない終活が進む一方、親介護のメイン世代である中年世代のお墓に対する視点は、生活スタイルと価値観の変化に大きく影響されていると言われています。
高度経済成長期以降の都市化の進展により、多くの中年世代は核家族化した都市部での生活を送るようになりました。
忙しい仕事と家事、育児に追われる中、効率性や利便性を重視する傾向が強くなってきてるといわれていま
コストや管理の効率性、アクセスの良さといった要素を重視し、納骨堂や共同墓地といった比較的手入れが容易な墓所を選好しています。
一方で、先祖への敬意と家族の絆を象徴するお墓の文化的・情緒的な意義も中年世代に根強く残っています。
こうした中年世代のお墓に対する二面性は、急速な社会変化の中で、伝統的な価値観と新しい生活様式の折り合いを付けようとする努力の表れといえるのではないでしょうか?
遠方の墓地参拝に時間とコストがかかる中で、自宅近くの手入れの容易な墓所を選択しつつ、墓参りの際には伝統的な供養の儀式を大切にするなど、実用性と伝統の融合が図られています。
さらに、近年では、デジタル技術の発展により、お墓の役割も大きく変容しつつあります。
オンラインメモリアルサイトやSNSなどの新しい追悼の場が登場し、物理的な墓地の制約を超えた、より個人的で対話的な形での記憶の保存が可能になってきています。
また、お墓が単なる埋葬の場所ではなく、文化遺産の保存や家系の歴史を物語る場所としても認識されるようになってきています。
お墓をめぐる価値観は時代とともに大きく変容しつつあり、中年世代の実用的な視点は、伝統的なお墓観との折り合いを付ける中で生まれた新しい価値観の表れであり、今後は、さらなる多様化と変容が予想されます。