“超”高齢化社会日本に進出する海外の介護機器達
番号 41

世界に先駆けて超高齢化を迎えた日本は、絶好の"テストマーケティング"先⁈
先日、『日本に続々と進出する海外の介護機器』を紹介する記事を見ました。
その中でひときわ、目立っていた機器が、センサーを搭載された「スマート杖」という介護用の杖です。
杖と言えば、過去に脳梗塞で十数年来半身不随だった父が在宅介護する事になり、今まで介護グッズを全く見た事も触れた事もなかった当時の私には、杖そのものが倒れない4点の足場付きの杖に、今まで抱いてきたいわゆる“杖”のイメージを覆す大きな衝撃を受けた事を覚えています。
半身不随という、ただでさえ不安定な体を、細い杖一本に体重をバランスよく乗せて、立ち座りや歩こうとした時、父が一番こだわっていた部分が『高さ』であり、微妙な長さの違いで、体重のかかり方が変わり、あっという間に転倒してしまうリスクがある為、何度も何度も試して微調整を繰り返し“黄金比”を見つけていたことを思い出します。
そんな杖にまつわるエピソードもあり、紹介されていた『スマート杖』のテクノロジーはまさに度肝を抜く内容でした。
人間工学に基づき、グリップ部分が手のひらにフィットされ、4点式の足場は歩行時の体重を分散させることで、腰痛などの身体的負担を軽減させ、父の一番のこだわりであった“長さ”は、電動式で無段階に調節可能で、ハンドル部分のボタンを押すと、杖が少しずつ高くなり、階段などの段差を登る際や立ち上がる際に短く、歩行時は長くするなどポジションに応じた長さ調整も可能で、利便性もさることながら、歩行能力向上にも寄与するという優れものでした。
また、アルミニウム合金製の軽量ながら頑丈なフレームには、複数のセンサーが埋め込まれており、利用者の動作や体重移動を常時モニタリングし、リスクが高まれば杖から振動や音声で警告され、転倒のリスクを検知し、GPSトラッキング機能も搭載され、使用者の位置情報をリアルタイムで把握でき、スマートフォンとBluetooth接続で連携する事で健康データを記録したり、家族に通知を送ったりする機能も利用できるという代物です。
もはや杖はただの杖ではなく、高齢者の健康維持や管理に欠かせない必須アイテムとして急速に普及の期待が高まっていました。
続発する“杖”ユーザーの事故
65歳以上の高齢者の約30〜40%が毎年一度は転倒を経験するとされており、毎年高齢者の“転倒事故”のニュースは年々増加しています。
転倒や転落による死亡者数も増加しており、毎年約1万人もの人が亡くなっており、交通事故による死亡者数の3倍近い数になっています。
今年の6月には東京都のスーパーで、80代の女性がエスカレーターの手すりの巻き込み口付近で、首を挟まれた状態で倒れているのが見つかり、病院に搬送されましたが、死亡したニュースがありました。
その女性は杖ではありませんでしたが、自身で持ち込んだ買い物用の“手押し車”とともに1階からエスカレーターに乗り、地下1階のフロアに降りたところで転倒したということです。
他にも76歳の女性がベランダに干していた洗濯物を取り込み、リビングに戻る際、段差につまずいた際、両手が洗濯物で塞がっていたせいで手をつくこともできず、頭部を打ち付け、頸椎骨折と頸髄損傷を併発して死亡したニュースもありました。
また、転倒が直接的な死因ではないものの、死亡につながるケースになることもあります。
76歳の男性が庭の手入れで置いていたホースに引っ掛かり転倒し、大腿骨を骨折し、金属製の人工骨頭を入れ、リハビリをしたものの回復せず、1ヵ月後には寝たきりになり、心筋梗塞を発症して死亡したニュースもあります。
杖が必要となった方が転倒した場合、とっさに手をつけなかったり、受け身を取れず全体重ごと叩きつけられてしまうことになり、致命的な事故につながる確率は断然高くなります。
一度でもそんな危険な目に会えば、外出することはおろか、動くこと自体に恐怖感が芽生え、外出意欲そのものが削がれてしまい、引きこもりにつながるなど転倒事故防止は高齢者にとってケアすべき最優先高項目であることは言うまでもありません。
世界から熱し線を浴び続ける日本の介護機器テクノロジー
周知の通り、日本は約3人に1人が65歳以上の高齢者と超高齢化社会を迎え、さらに世界的にも、国連の報告書によれば、2019年時点で65歳以上の高齢者は世界人口の9%を占めていましたが、2050年には16%に達すると予測されています。
こうした世界的な少子高齢化の背景からも先んじて超高齢化に突入した日本は約50億円程度の予算が介護ロボットの導入支援や研究開発に割り当てられるなど、世界的にも注目されている“マーケット”になってきています。
海外のメーカーは特にAIやIoTを活用した介護機器が多く見られ、今回のスマート杖のような革新的な新技術の開発が活発であることに加え、日本より開発に対する規制が緩やかであり、新しい技術を迅速に試験し、商業化しやすい環境があることから、スピーディーに全世界へ発信していくことが可能です。
一方で、海外製品に比べて故障率や不良率を著しく低く製造するこだわりの強い日本の“モノづくり文化”と、家族とのつながりを重視した、きめ細やかな介護文化や哲学は、こういった海外からの流入組ではなかなか実現しえない、日本ならではの“価値観”が根付いており、これが当たり前の日本の高齢者ユーザーに受け入れられるかどうかは海外組にとって大きなハードルとなっています。
いずれにせよ介護機器ユーザーや我々その家族は、海外の得意とするデジタル技術と日本のモノづくりの価値観を掛け合わせた“いいとこどり”でできた介護機器の開発を大いに期待したい所です。
【代表的なスマート杖のメーカーと特徴】
■WeWALK
・URL: https://wewalk.io/en/
・特徴: トルコ発のスタートアップ。スマートフォンと連携し、音声ナビゲーションや障害物検知機能を備えています。ユーザーが歩行中に安全に移動できるようサポートします。
■Dring
・URL: http://dring.io/en/
・特徴: フランスの杖メーカーのFayet社が開発
使っている人の日常の動きをAIが学習して、異常を発見することが可能。
アラート機能がついていて、杖が倒れたり、ボタンを押すことで設定された番号に電話したり、メールを送ることが出来ます。
◾️STICKu
・URL:https://www.bnet-tech.com/ja/classic-home-jp/