20歳以上の日本人の90%以上は原因ウイルスが体内に潜伏していると言われる『帯状疱疹』とは?
番号 32
80歳までに約3人に1人が発症する⁈
先日、会社の健康診断で人間ドックを受診した際、心電図での“乱れ”を指摘されました。
心拍の"乱れ"とただならならぬ響きの中、さらにその直後の問診で聴診器から"雑音"が確認され、今まで年一で検診をしながらも一度も指摘されたこともなく、脳疾患家系の自分は心臓は勝手に丈夫だとノーマークで、動揺して思わず
「今は心臓、整っていますがね…」
と、ワケの分からない回答を問診の内科医にしていました。
続けて、内科医から心当たりを聞かれ、考えられた要因はただ一つ、5か月前にかかった「帯状疱疹」を真っ先に挙げました。
治療が完了して5か月たった今でも左胸に‟痛痒さ“が残り、日常生活でも常に左胸に違和感を覚えながら生活を送っていましたが、まさか心臓にまで何らかの影響を及ぼしているかも、と考えた途端、とんでもない不安に襲われました。
20~40代の発症率は3年間で1.8倍に急増
帯状疱疹は、帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる皮膚の病気で、子供の頃に水痘(みずぼうそう)に感染した後、体内に潜伏し、免疫力が低下した際に再活性化することで発症します。
日本人成人の90%以上は帯状疱疹の原因となるウイルスが体内に潜伏していると言われており、免疫力が低下している人や、慢性的な病気を抱えている人などは特に発症リスクが高く、働き盛りの世代や子育て世代において、ストレスや疲労の蓄積が引き金となり、50歳を越してくる頃、発症リスクが一気に高まると言われています。
まさに50代である私も先日、背中に痛みを感じ、最初は「寝違えたかな…?」ぐらいで昼間を過ごしていましたが、その日の晩、背中と心臓に激痛を感じ、息が浅くなるぐらいの異次元の痛みになってきた為、自ら救急車を呼ぼうとも考えましたが、真夜中にサイレンが響き、近所に迷惑をかけられないと躊躇し、ただただうずくまりながら一睡もできずに夜が明けるのを待っていました。
翌朝、もちろん会社どころではなく、朝イチで循環器内科へ受診するも異常が見当たらず、痛み止めの薬だけもらいつつも、背中の痛みが増大の一途を辿り、数日後、今度は整形外科を受診するも異常なしとの診断結果で、結局、痛み止めを大量に処方される日々を過ごしていました。
大量の鎮痛剤を"オヤツ感覚"で飲み続けた結果、胃までやられてしまい、あらゆる所の激痛で数日間ほとんど寝ていない状況が続き、意識が飛び始めた時、左胸にやたら痛い赤い発疹が出始めました。
慌ててWebで症状を検索してみた時に初めて帯状疱疹の症状と完全一致していて、さらに診察する診療科が意外にも皮膚科だと知りました。
長く続いた診療科の"ハシゴ旅"もようやく終着点へ辿りついた瞬間でした。
恐ろし過ぎる"後の祭り"
帯状疱疹ウイルスは血管内皮細胞に直接感染し、損傷や炎症を引き起こすことで血管炎を生じさせると考えられています。
また、ウイルス感染に伴う全身性の炎症反応が動脈硬化を促進する可能性があり、炎症により血管内皮機能が障害され、酸化ストレスや免疫細胞の活性化を介して動脈硬化が進行すると推測されています。
さらに、ウイルスが自律神経系に影響を及ぼし、交感神経系の過剰活性化を引き起こすことで、血管収縮や血圧上昇、不整脈などのリスクが高まると考えられます。
近年の疫学研究により、帯状疱疹の発症と心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患リスクの上昇に関連があることが示唆されています。
米国での大規模研究では、帯状疱疹患者の心筋梗塞リスクは発症後1年以内に3.4倍、脳卒中リスクは2.4倍上昇したことが報告されており、英国の別の研究でも、帯状疱疹の既往のある人は心血管疾患のリスクが40%高いという結果が得られているようです。
さらに、ハーバード大学の研究チームは帯状疱疹の既往のある人の心血管疾患発症リスクが59%高いことを明らかにしており、台湾の大規模コホート研究でも、帯状疱疹患者は心筋梗塞のリスクが約2倍、脳卒中のリスクが約1.6倍高いことが示されています。
これらの研究結果からも、帯状疱疹と心血管疾患の疫学的関連を強く裏付け、帯状疱疹の発症を予防することが、心血管疾患リスクの低減にもつながると言えそうです。
50歳以上の方は、自治体から送られてくるワクチン接種案内など是非、マメにチェックしてみてはいかがでしょうか?