「認知症の母とあと何回話すことができるのだろう?」と考えた瞬間

番号 32

# 介護録

# 大切な家族へ

当たり前に思っていた"親の元気"は当たり前だが当たり前ではない

いよいよお盆にも突入し、帰省のシーズンとなってきました。
 
2024年のお盆休みは最大9連休となり、帰省ラッシュとUターンラッシュで高速道路が大変混雑すると予想されています。
また、新幹線の予約状況も、昨年比22%増、2018年(コロナ前)比10%増と好調のようで、コロナ渦の反動で帰省する人も増えているというニュースも目にします。
 
世間が楽しい夏休みの中、我が家はといえば、母の入所する介護施設側から物々しい雰囲気で“緊急”面談依頼という連絡が入り、予定外の『強制帰省』となってしまいました。
 
今までも何度か呼び出されては、事なきを得てきましたが、今回は事情が違うようで精神科医も同席での面談という事です。
面談が始まるといつも明るく接して下さる担当の職員さんが、いつもにない厳しい表情で静かに話し始めました。

緊張して聞いていると認知症が進み、以前よりも感情の起伏が激しくなり、今までも暴言や物にあたるなど問題行動もあったようですが、最近では職員の方や他の入所者にもほぼ毎日暴れたり、暴力をふるってしまったりすることがあるそうで、一時的な精神病院への入所を勧めたい、という内容でした。

昔から生真面目で穏やかな母は声を荒げた事すら一度もなく、ましてや第三者に暴力を振るうなど正直全く信じられない状況でしたが、職員の方がこれだけおっしゃるなら事実だと受け入れざるをえません。

人格すらも変えてしまう認知症という病気の恐ろしさを感じながらも、暴れてしまうタイミングなど詳細を聞き進めていくと、いつも親切にしてくれている若い男性職員が他の入所者の対応をしている時に激昂してしまうらしく、暴力を振るわれた入所者の方やそのご家族からもクレームが出るほどとの事でした。
 
介護職員と精神科医の先生から真顔で母の“ジェラばな”を切々と聞かされ、まさかの異性絡みの恥ずかしいやら情けないやらの話も上乗せされ、かつての『穏やかで生真面目な母像』など一瞬で消えうせ、「全ては病気のせい」と話づらそうに話す職員さんにも最大限気を使わせるという事態に、迷う事なく精神病院へ直行する事を即決しました。

認知症と人格変化の関係

精神科医の話によれば、既に中等度の認知症になっている母は入院しながら薬の効果を見て、感情が収まる重度になるのをひたすら待つ、という何とも悲しい説明でした。

また、認知症の進行に伴い、性格や行動が変化するような「人格変化」があるそうで、認知症の種類それぞれにより以下のような特徴的な人格変化が見られるようです。

- アルツハイマー型:穏やかだった人が短気になるなどの性格変化がある。

- レビー小体型:幻覚や妄想などの行動・心理症状が特徴的。

- 前頭側頭葉変性症:性格変化や言語障害が主な症状。

コロナから回復する『帰省率』

面談中、バツが悪そうに無表情で隅っこにちょこんと座る母。

既に家族の顔も名前も忘れ、私達家族を新しい職員と認識しているようで、その新人職員にあれこれ注意されるのを面倒くさそうに、何を聞いても、よく分からない回答をボソボソとかろうじて聞こえるぐらいの極小な声で反応する姿を見て、これからもっと進んだら、あと何回まとも話せるのか?とてつもなく悲しい気持ちになりました。

実家から離れて暮らしている人を対象にした『帰省頻度のアンケート調査』によると、「年に1回」が最も多く36.5%、次いで「年に2回」が27.8%、「年に3回以上」が18.2%となっており、「帰省しない」と回答した人も17.5%というデータがあります。

会えば口うるさく言われ、毎回ケンカして帰るような思い出がありましたが、いざ話せなくなるようなタイミングを迎えると、後悔ばかりが出てきてしまいます。

遠く離れて暮らしていると頻繁に顔を合わせるのはなかなか難しいですが、連絡だけでもできるうちにしておくだけで、心持ちは変わるかもしれません。

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