食べたいものを食べられる“ありがたみ”
番号 22
「好きなものを好きなタイミングで食べられる」のは最高のリハビリ⁈
先日、ある雑誌に『シニアの好きな食べ物ランキング』という記事を目にする機会がありました。
ぶっちぎりのトップを独占していたのが、やはりお寿司、刺身と不動の2トップでありながらも、それ以降のランキングも、うなぎや焼き魚、煮つけなど魚関連のものが多くランクインされていました。
思えば、“自称”美食家を名乗る父親も例外なくランキング1位に刺身がエントリーしており、肉料理メインでも組み合わせお構いなしで毎食、必ず付け合わせ的に刺身を入れているほど無類の刺身好きでした。
ただの刺身好きであれば良かったですが、釣りなどほとんどしたことないのに、なぜか釣具屋を営んでいた父は以前から「昔は市場に通い詰めていた」と妙な『魚つながりエピソード』を語り、いつしか「魚の目利きにはうるさい」というような面倒なキャラ設定を作り上げ、母が買ってきた“激安”値札の付いたマグロを見ては
「安いマグロは筋の入り方が悪く、口当たりが変わる。取り替えてきてくれ」
とスーパーの魚相手にスーパー面倒くさい“エセ目利きの達人ぶり”を惜しげもなく発揮していました。
いつものエセぶりに溜息をつきながらも、母親も慣れた手つきで値下げ札だけ取って取り替えたふりをして再び見せると
「最初からこういうのを買ってくるように」
と、顔を引きつりながらも必死に笑いをこらえる母をよそに、おいしそうに平らげている父の姿を見て、好きなものを食べる行為は、その人の色々なものを満たしてくれているのだと感じました。
リハビリもさぼりまくり、一日中車いすに乗りテレビを見て、ほとんど動かないような生活をしながらも20年近くも大きな病気にもかからず、ストレスなく過ごせたのは『自宅で好きなものを好きなタイミングで好きなだけ食べられた事』が有効なリハビリになっていたのかもしれないと、今思うと感じます。
“自分のペース”も嬉しい要素
父は半身不随でも幸い利き手は動いた為、ある程度スムーズに食事はできましたが、同じ病棟に入院していた脳梗塞の患者さんでは利き手を変えて食トレをしていながらも、その不都合さ加減に慣れず、食事量をみるみる減らし、あっという間に体力も気力も失せ、そのうち院内感染など別の疾患に悩まされたご家族もいらっしゃいました。
まさに生きる活力をも左右すると言っても過言ではない“食事”ですが、最近では麻痺などで自立した食事を摂る事が困難な方に自分のペースとタイミングで食べられる食事介助ロボットが登場したというニュースを耳にしました。
欧米では既に多くの実績があるようですが、日本では2023昨年から輸入販売開始し、必要な方が少しでも軽い負担で使う事ができるよう、国や各自治体等とも連携を取りながら、購入補助・レンタル補助制度などの適用も目指していくとの事で、介護業界の人手不足サポートツールとしても今後の普及を期待されています。
目利きして買い直しまではお願いできませんが、好きなものを食べられる欲を満たすアイテムとしてチェックしてみてはいかがでしょうか?
■自立した食事を可能にする食事介助ロボット Obi(オビー)
https://j-d.co.jp/fukushikiki-obi.html