達人にもっと学びたい! “アンガーマネジメント”の世界
番号 16
介護家族の憧れアイテム 『怒りコントローラー』
先日、会社でアンガーマネジメントの研修を受講しました。
数年前から会社で人気の研修プログラムで興味はあったものの、あたかも「短気に悩んでいる人」と見られるのが嫌でずっと避けていました。
ダイバーシティやハラスメントなどと言われる昨今、社会におけるコミュニケーション形態が大きく変わり、当然の"所作"として知らないともっと恥かくと感じたのが受講のきっかけです。
一見、“怒らない”状態をコントロールするよう、自分の心をストイックに整えるようなイメージがありましたが、お坊さんのように穏やかな顔つきの講師の先生が再三強調されていたのは、
『怒るべき場面では上手に怒り、怒る必要のない場面では怒らなくて済むようにトレーニングする』
というものでした。
おっしゃる事は「ごもっとも」と思いつつも、昔から沸点の低さに定評がある私にとって、そもそもの『怒るべき場面を見極める』こと自体、人生の"最難関課題"であることは言うまでもありません。
続けざまに、お坊さん講師から
「まずは、今までの『怒りベスト3』を思い浮かべて下さい」
と言われ、怒りに"ベスト"って・・とツッコミを入れつつ、思い起こしてみるも
父に関するもの、母に関する、母の・・・と、会社での怒りよりも、親の介護での一コマがモーレツにフラッシュバックされ、再び怒りが込み上げてきてしまう、という本末転倒感満載の幕開けでした。
介護家族にとって最も必要そうな能力といっても過言ではない、この"アンガーマネジメント"ですが、会社ならまだしも身近で色々と知り尽くした家族では勝手が違うのでは?と疑いつつも、介護にも通ずると刺さった二つのポイントをご紹介します。
“許容範囲”の幅を広げる
怒ることのメカニズムは「普通こうするだろう」という理想や価値観を超えた時に起こるものと言われています。
「なぜそんなことするのだろう?」「なぜ何度言ってもできないのだろう?」と自分の理解や常識をはるかに超えたなぜ?が生じた時、確認する表現として“怒り”が発生します。
価値観が形成されるルーツは一般的に、今まで培ってきた経験であったり、知識であったり、これらの蓄積が「こういうものだ」という価値観を形成します。
つまり、経験や情報が少ない時は価値観も狭く、多くの例外や経験則にない情報を得た時、価値観は広がっていくと言えます。
さらに狭い世界の中で、いつも決まった人とだけで繋がっていると、「ウチだけできない」と根拠乏しいにも関わらず、すぐに悲観的になりがちです。
世の中にはもっと困っている人は沢山いる、と多く知る事で、「できる人の方が少ない」や「むしろ、できる方がすごい」といった前向きな価値観が生まれ、ひいては自身の許容範囲の幅を広げることにつながり、積極的な"失敗事例収集"は効果的な行為である言えそうです。
繋がりながらも“間”を取る
人間だれしもが保有している社会性・ソーシャルスタンスとして、初対面の方に怒ることはヤンキーでもない限り、そうそう起きることはないでしょう。
関係性が少ない他人に対しては自分の感情を出すことは一般的にはしづらく、関係値が高まってくると感情や本音を出しやすい、ということは言うまでもありません。
会社でも毎日顔を合わせ、会議や飲み会などコミュニケーション頻度が増えてくると、言いたい事も言えるような関係値となり、ひいては怒ったり仲たがいをしたりするトラブルが生じやすくなるものです。
では、この近くなった関係値をどのようにマネジメントするか?
研修の中では“6秒ルール”や“回避”といったような表現で紹介されていましたが、物理的にも精神的にも“間”を取ることが重要のようです。
怒る時に「こういう言い方したらこの後どうなってしまうだろう?」やイラっとしても「後でどうしても気になった時だけ言おう」と後回しで考えたり、面と向かっていると"間"など考える余裕が取れないという方は、怒りそうになったら直ちにその場から離れ場所を変えてみたり、一緒の空間にいる事自体が無理なら、遠く離れた場所からリモートでコミュニケーションするような物理的な間を置くことも効果的なようです。
“間”を置くことは冷静に考える時間が生まれ、無用な言い争いを避け、感情的な“しこり”の発生を抑え、結果的に生産性につながる重要な要素であると言えます。
コミュニケーションを維持する潤滑剤としての"間"を置く事ができるというような難易度の高めな能力は、会社のみならず家庭にも通ずる成果行動(コンピテンシー)であるのかもしれません。
とはいえ、こと親の事となれば積み上げてきた歴史や経緯も相まって、きれいごとでは済まされない感情があるかもしれません。
会社でも家族に対しても、つい厳しく当たりすぎ、毎回後悔してしまっているような方は、冷静に自分を見つめ直す"間"として是非一度、受講してみてはいかがでしょうか?