気難しい父を心酔させた ヘルパーさんの“突出した”能力
番号 15
“神の嗅覚”を持つヘルパーさん 降臨
ある日、実家に新しいヘルパーさんが来ました。
以前も触れましたが父は「自分に激アマ、他人に鬼キビ」気質なので、過去多くのヘルパーさんに敬遠され続けた経験から、まずは慣れて頂けるかどうか心配していました。
父より二回りぐらい若い女性の方でしたので、きっと父のような「オレ様」口調の人は最も敬遠されるだろうと半ばあきらめもしていましたが、意外にも父のオラオラ話にも全くひるむことなく、話題も豊富で、かと思えばじっくり傾聴してくれる場面もある、完璧な“癒し系”な方で、父はもとより私達家族もすぐに彼女の人柄に引き込まれていました。
そんな“癒しヘルパーさん”ですが、介助にくると決まって、
「あっ、昨日は焼肉ですか?いいな~~」
とか、
「今朝は焼き魚食べましたか?最近食べてないな~~」
とか、まるで一緒に食べていたかのように、ほぼ100%の確率で我が家のご飯を的中させます。
最初の頃は、料理得意なのかな?ぐらいで思っていましたが、
そのうち玄関から
「トイレの消臭剤、変えました?」とか、
「どっかで、コーヒーか何かこぼしました?」とか、
遠隔からでも自由自在に微妙な香りすらも探り当て、いつしか我々家族内でも『癒しヘルパーさん』から神の嗅覚を持つ『スメル様』と呼び名を変え、崇めるようになっていきました。
スメル様の“真骨頂”
だんだん父も、スメル様から香りに関する話題をいつ触れられても良いように、例えば前日に天ぷらだったら、どんな具を揚げたのか、などを覚えて来るべき「香り談義」の予習に余念がなく、今まで一方的に威張り散らかしていた会話が、自然と双方向で弾めるようになり、終いにはスメル様から触れてもらえるよう、あえてにおいのするご飯を用意したりして、健気にコミュニケーションを心待ちにする日々を過ごしていました。
一方でスメル様もコミュニケーションとしての香りの話だけでなく、おむつのにおいもすぐに感知し早々に交換したり、ポットの空焚きを気づいたり、寝具の交換時期を的確に指摘してくれたりと実務でもその力は如何なく発揮されていきました。
スメル様曰く
「異変を感じる能力の中で、嗅覚は最も重要な器官の一つなので、ヘルパーさんで敏感な人は多いはず」
と聞き、敏腕ヘルパーさんの"あるある能力"なんだと感心しました。
“におい問題”をにおわせたまま、突然のお別れ
一方で、そろそろ重要文化財にでも指定されてもおかしくないぐらい歴史の沁みついている実家の、“今さらにおい対策”も加速度を増していきます。
度重なる香り談義を重ね、行き着いた極論が“消臭”へと変遷を辿り、父も母も少しのにおいも許さない敏感な嗅覚を急に目覚めさせ、見事に“消臭グッズの沼”にハマっていきました。
それこそ最初は市販の消臭剤を何種類も試し、究極と思われる無香料に行きついたと思えば、スメル様から「においをにおいで消しているだけ。まだ人工的なにおいが残っている」と指摘され、ならば空気ごと循環させようとエアコンを新調、それでもまだ「カビのにおいが気になりますね・・」と、最終的には高性能な業務用の最新空気清浄器にまで手を伸ばしていきました。
そんな甲斐もあり、古い実家の父の一室だけ、まるで研究所の無菌室かという程、クリーンで澄んだ空気になり、ハウスダストやウイルスなどのアレルゲン物質にもビクともしない鉄壁で安心な日々を暮らせました。
我が家の意識していなかった"におい問題"をこれほどまでにフィーバーさせてくれたスメル様ですが、2年を過ぎたある日、突然「寿司職人になる」と言い、あっさりと辞めてしまいました。
どんな思いで、これだけ全く違う業種への転職を決意したのか?とても気になりつつも、五感をフルに活かすイメージの料理の世界で、確かにもっと活躍できそうなイメージが持て、あまり違和感なく納得したのと同時に、その特性を介護現場で発揮するスペシャリストが一人減ってしまう事に惜しい気持ちでいっぱいになりました。
進化を遂げる消臭グッズ
あれから数年経ち、すっかり実家の“消臭フィーバー”も懐かしく思えた先日、数百社の介護機器企業が出展する展示会に参加してきました。
介護事業者向けのものが多く、一般の方が入場できない展示会の為、なかなかお見かけしないような機器も多数出展される展示会です。
いくつもの最新介護機器が並ぶ中、一際賑わう消臭グッズを紹介するブースを発見しました。
久々に目にする消臭グッズは、主に介護施設や病院など専門施設などで導入が進んでいる、水道水だけで作る“高機能除菌水生成器”というものでした。
企業の方が丁寧に説明して下さり、「においでにおいを消すのではなく根本物質を分解します」とまさにスメル様の指摘を彷彿させる説明を聞き、さらに分解具合のデモンストレーションでは青い色のついた水を、この除菌水を吹きかけた瞬間で透明にするという効果を体感。ビジュアル的にも最高のプレゼンを伺いました。
本体価格は税込みで20,000円を切る安さの上、水道水だけということもあり、ランニングコストも年間でなんと約10円という、あの時の親が来ていたら会場で即買いしたであろう、リーズナブルで大きな効果を期待できるグッズに、かつて追い求めた“究極の消臭”の一幕が、こういった大きな展示会でも出展されるほど、介護家族が抱えるような問題になっていた事に改めて考えさせられる体験でした。
こだわりの消臭剤や空気清浄機を探し求めている方は一度、チェックしてみてはいかがでしょうか?
・水道水から“除菌水をつくる”新しい暮らし
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