“エアドロボウ”の被害に悩む方へ朗報

番号 12

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# 大切な家族へ

認知症のお宅を狙って何度も押し入る“エアドロボウ”

母が認知症初期のある日の夕方、突然

「ドロボウに入られたかもしれないから、すぐに来てチョーダイ!!」

と、ものすごい勢いで電話が来ました。

その日は、たまたま実家から電車で1時間ぐらいの所にある取引先で“1年越しの悲願”となりうる商談の真っ最中でしたが、ただならぬ母親の声が電話越しに聞こえてしまい、あとちょっとでクロージングという所で逃げられ、怒りを沸々と煮えたぎらせながら超特急で実家に帰りました。

行ってみると確かに“何物か”に物色されたがごとく、物が散乱していて、その真ん中でおろおろしている母の姿がありました。

大した金目の物も無いハズなのに「警察に連絡する!」と取り乱している母をなだめ、一体何を盗まれたか冷静に聞いてみると、玄関の“カギ”との事。

通帳やお財布には目もくれず、カギだけ狙うマニアックな“エアドロボウ”の存在に、買い物に出かけようとした時に気づき、朝からずっと探し散らかしているという。
そのエピソードから『何物かに物色された』の“何物か”もあっという間に特定され、“ドロボウ説”から“失くし物説”へと疑惑の目は一瞬にして母に向けられました。

そんな中でさえも、自分を被害者だと疑わず、必要以上に大騒ぎする母に更なる怒りを覚えながらも、スペアキーが一つしかないカギを失くすのはあまりに物騒な為、先程クロージングのカギを失ったばかりのよしみで、大捜索に付き合いました。

しかしながら、最後に使った時を思い出そうにも、今朝食べたものすら忘れてしまっているので全く頼りなく、手あたり次第に心当たりのあらゆる場所を探し尽くしましたが見つかりません。

案の定、大捜索は難航を極め、怒りと空腹に加え、母のコロコロ変わる記憶に疲れのピークが達し、あえなくタイムアップ。
“エア”と疑っていながらも、万が一本当に盗られた可能性もあるため、その日は大事を取って我が家へ泊めることにしました。

“盲点”をつく知能犯

久しぶりの親・子・孫3世代での夕飯を終え、いざお風呂の時間に、この『カギ盗難騒動』に突然の終止符が打たれたのでした。

着替えていた母親が風呂場から大きな声で
「カギあった!!!」
と叫んでいます。

あれだけ探しても出てこなかったのに我が家のしかも風呂場で見つかるなんて・・まさか・・と半信半疑で確認してみると、なんと首からぶら下げていたではありませんか。

「もう、誰がこんな所に隠し入れたのかしら!!」と、
突っ込み待ちなのか?と思わせる程のコメントを吐き捨てながら、家族から怒られないようにか、なぜか切れ気味で質問にカブせてくる母。
聞けば、過去に何回か失くしてしまいその都度、大捜索する事に疲れ果てた為、大切に首から下げておこうと数日前から肌身離さず持っていたそうです。

かくして、失くし物をしないように対策したものを忘れてしまうという、なぞなぞのような顛末で事態はあっという間に解決しました。

「決して忘れたのではありません、大切にしまっておいただけです」を繰り返す愉快犯

認知症の方によくみられる症状として『物を隠す』という行動があります。

この背景には、“記憶障害”が関係しているそうで、大切な物をなくさないように、大事にしまっている感覚だそうです。

母は他にも通帳を大事な箱にしまっていた、その箱の場所を忘れてしまったり、印鑑を押し入れの箱の中の袋の中の箱に包んで“マトリョーシカ”状態で格納してしまったせいで作り直したりと、ある意味"鉄壁のセキュリティ"を誇り、家族を何度も緊急招集させてくれました。

しかも、自分でそのセキュリティ網を作り上げておきながら、めちゃくちゃ怒りながら探す、という理解不能な理不尽さを兼ね揃えています。

昨今ではスマートタグやキーファインダーといった名前で、Bluetooth通信を用いて、スマートフォンとの距離を元に、忘れ物の発生を検知し、置き忘れた場所を特定できるだけではなく、AR技術を使って近くの物の場所を探知するカメラ機能や紛失を未然に防ぐさまざまな機能を搭載した、認知症の『物隠し』行動にも対応できそうな便利なグッズが次々と登場しています。

認知症が進んでいくと「探し物が何だったか?」ということすら忘れてしまい、無駄に呼び出される回数を増やさないよう導入を検討してみてはいかがでしょうか?

・音が鳴るから、すぐ見つかる。
紛失防止タグ「Tile」
https://thetileapp.jp/

・見つける天才
Apple 「AirTag」
https://www.apple.com/jp/airtag/

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