親の「しがち」行動 第二回 -こだわり編-

番号 141

# 介護録

# 大切な家族へ

温め続ける「新品」

新しい靴を買った。

新しいタオルも買った。

鞄もプレゼントした。

なのに、今日も使っているのは、いつもの古いやつ。

「新しいの、使えば?」

そう言っても、

「まだこれ使えるから」

……新品は、いつ使うのでしょう。

新しい靴は、箱に入ったまま。
新しいタオルは、きれいに畳まれたまま。

そして、何年も使っているタオルは、
少し薄くなっても現役です。

新しい財布を買っても、
「今のがまだ使える」と前の財布を使い続ける。

新しい食器を買っても、
結局いつもの皿が食卓に並ぶ。

「せっかく買ったのに」と思うけれど、
本人からすれば、

「まだ使えるものを替える理由がない」

のかもしれません。

新品なのに、なぜか出番が来ない。

親の「新品温存」は、なかなか手強いのです。

どんなに散らかってても働く、「動かした?」センサー

家の中には、
家族には分からない「親ルール」があります。

リモコンはテレビの横。

鍵は玄関のこの場所。

新聞は、この向き。

いつもの場所に置いてあるだけなのに、
ちょっと動かすと、

「これ、動かした?」

すぐ気づく。

「いや、ちょっとこっちに置いただけ」

と言っても、

「こっちじゃないんだよ」

そして、元の場所へ。

旅行から帰ってきて、
家族が掃除のついでに物を整理すると、

「なんか、違う」

と言われる。

引き出しの中まで、
本人なりの「ここが一番いい」があるようです。

こっちからすると、

「そこまで細かく覚えてるの?」

と思う。

でも、毎日そこで暮らしている本人にとっては、
その場所が一番しっくりくる。

家の中には、
家族にも知らない「親だけの地図」があるのかもしれません。

それ、いつ使うの??

引き出しを開けると、

輪ゴム。
クリップ。
小さな袋。
紙袋。
よく分からないヒモ。

「これ、何に使うの?」

「そのうち使うから」

その「そのうち」が、
いつ来るのかは分かりません。

お菓子の空き缶にはボタン。

ジャムの瓶には何かの小物。

使い終わった箱には、
なぜか電池が入っている。

「これ、もう捨てていい?」

と聞くと、

「ダメダメ。まだ使えるから」

使い道は、今のところありません。

でも、捨てる理由もない。

そして数年後。

同じようなものが、
また一つ増えている。

新品をすぐには使わない。

置き場所にはこだわる。

小さなものまで大切に取っておく。

ちょっと不思議だけど、
それを見ていると、

「昔から、こうだったな」

と思うことがあります。

効率だけで考えれば、
もっと簡単にできることもある。

でも、長い時間をかけて身についた
「自分のやり方」がある。

それもまた、
その人らしさなのかもしれません。

そして、そんな小さなこだわりを見つけると、
ふと、その人と過ごした昔の時間まで
思い出すことがあります。

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